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映画監督 大林宣彦さん

一病息災

[映画監督 大林宣彦さん]肺がん(2)「花筐」 一番の愛読書

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 7歳で終戦を迎えた。占領政策で奔流のように入って来たハリウッド映画をむさぼるように見た。映画との出会いは3歳。納戸に映写機があり、フィルムを切ってつなげて遊んだ。見る楽しさより、作る楽しさを先に覚えていた。

[映画監督 大林宣彦さん]肺がん(2)「花筐」 一番の愛読書

 上京し大学に入ったが中退。8ミリ映像を画廊のキャンバスに映すなどアマチュア映像作家として活動。広告会社に声を掛けられ、テレビCMの 黎明れいめい 期を飾るヒット作を次々と手がけるようになった。

 1975年、商業映画デビュー作として企画したのが小説家・檀一雄の「 花筐はなかたみ 」だった。36年に檀は24歳でこれを書き、単行本を出した直後に出征していた。戦争前夜、自由を求める若者たちの声にならない思いと、純粋さを増す恋と友情に引かれた。「花筐」は一番の愛読書だった。

 映画化へ檀の快諾はもらったが、当時、檀は末期の肺がんで、翌年に死去。世間のムードは、戦争と恋と友情より経済成長優先だった。映画会社の意向もあり、監督人生は、別の映画で歩み始めた。

 それから約40年、「第二の敗戦」と感じた東日本大震災を経験し、再び「花筐」の映画化に乗り出した。だが撮影開始の直前、「余命」を告知される。その時、ふわっと温かい気持ちになった。

 「あの時の檀さんと同じ境遇になることで、戦争の時期に青春を過ごした者の断念と覚悟に迫れる」――。そう感じたからだった。

  映画監督 大林宣彦さん(80)

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