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40代から備えよう「老後のお金」 楢戸ひかる

医療・健康・介護のコラム

私が両親と「任意後見契約」を結んだ理由

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砂川さんの死が人ごとではなかった

 俳優の砂川啓介さんが亡くなった時、「大山のぶ代さんは、どうなるの?」と思った方も少なくなかったのではないでしょうか。砂川さんは「ドラえもん」の声優だった大山のぶ代さんの夫で、大山さんが認知症であることを公表して介護をされていました。ご夫妻にお子さんはいません。

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  以前のコラム にも書いた通り、父方が 脳溢血(のういっけつ) 家系の長女である私。父に後遺症が残った時を考えると、砂川さんの死は、「判断能力が不十分な人の世話をする責任がある」という意味で、とても人ごととは思えませんでした。そこで「任意後見制度」について調べ始めました。

「あらかじめ選んでおける」任意後見制度

 「任意後見制度」とは、本人(私の場合は両親)の判断能力がある間に、判断能力が不十分になった時の任意後見人を選んでおく制度です。判断能力が低下した時には、本人に代わって任意後見人が法律行為を行うことができます。

 成年後見制度には「法定後見」もありますが、こちらは本人の意思とは関係なく家庭裁判所によって後見人が選ばれます。両者の違いは、「任意後見」の場合は本人の意思で後見人を「あらかじめ選んでおける」という点です。また、お願いする内容も本人が決めることができます。それゆえ、法律上も本人の意思が反映された契約とみなされ「法定後見」より優先されます。

親と「お金のこと」を話すキッカケに

 私は昨年の秋、両親と任意後見契約を結びました。その感想を一言で言えば、「『子ども』から『保護者(介護者)』へ。親子のモード切り替えになった」ということです。

 「老親とお金の話をするキッカケがつかめない」というのは、40代共通の悩みでしょう。実は、私もそうでした。けれども任意後見のセミナーで見たある光景で、意識が変わりました。そのセミナーは、「任意後見を頼む側の人向け」だったので、受講者は私以外全員が親世代。セミナーの最後で受講者の女性がこんなふうに言っていました。

 「私たちの仲間内で、認知症の備えとして任意後見の話がよく出ます。でも、最後はいつも、『誰に頼めばよいか?』が問題になるのです」

 理路整然とした話ぶり、お 洒落(しゃれ) な身なり。どうやらキャリアを積んだ独身の方のようです。その時、私は「こんなに凛と自立された方でも、『誰か』が必要なのだな」と思いました。ちなみに講師の司法書士さんは「 公益社団法人 成年後見センター・リーガルサポート 」を紹介していました。

 セミナー後に、両親に任意後見の話を切り出したところ、「心強い」と言ってくれました。契約を結ぶための話し合いの中で、「今後、どのように過ごしていきたいのか」について私から両親に聞いてみたところ、反応は「そういう話を、一度、きちんとしたかった」。たとえば「療養看護のために財産をどのように使ってほしいか」「医療はどこまで希望するのか」「お葬式は?」「お墓は?」といったことについて、ゆっくり話す時間と機会が持てたことは、任意後見契約を結んだことの大きな副産物でした。

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楢戸 ひかる(ならと・ひかる)

マネーライター
 1969年生まれ。大手商社に勤務後、90年代よりマネー記事を執筆。「誰もが安心してお金のことを学ぶ場」である「お金のリビング」を主宰。その入り口として、「ザックリ家計簿」ワークショップをオンラインにて開講中。詳しくはホームページ「主婦er」で。
 お金の記事だけでなく、「家族」や「暮らし」についてもコンテンツ更新中。

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