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増える「人工関節」手術…膝や股関節、痛みを改善

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 60歳代半ばから膝が痛み始めた東京都の白土宏子さん(73)。徐々に オー 脚傾向が進み、歩行中に転倒することも増えた。思いきって昨夏と秋、膝関節を右、左と順に、金属などで出来た「人工関節」に置き換える手術を受けると、痛みが消え、転倒もなくなった。社会の高齢化が進み、人工関節の手術が増えている。(高橋圭史)

 

高齢女性が中心

 

増える「人工関節」手術…膝や股関節、痛みを改善

 人工関節は、傷ついた関節表面の骨を切り、金属と高分子ポリエチレンの人工物に取り換える治療。対象は、関節リウマチのほか、加齢に伴い、体重がかかる膝や股関節の軟骨がすり減って痛む「変形性関節症」の重症患者だ。軟骨がほとんどなくなり、関節の変形が進んだ人にも対応できる。

 保険診療の治療件数を集積した国のデータベースの情報が2年前から公開され、国内で行われる人工関節の手術件数や患者の性別、年齢層などが正確にわかるようになった。これによると、2015年度に国内で行われた膝の人工関節手術は約7万8600件。股関節は約5万4500件に上る。

 帝京大学病院整形外科教授の中川匠さんは「国内の人工関節手術は、ここ10年で、ほぼ倍増の勢いだと感じている」と話す。中心は高齢者の変形性関節症で、膝の手術を受けた人は70歳代後半が最も多い。股関節は、生まれつきの形状も影響するので50歳代から増え、60~70歳代が多い。膝も股関節も、手術を受けた人の8割以上が女性だ。破損やゆるみなどによる入れ替えの再手術は、全体の数%程度だった。

 入院は3週間~1か月程度。通常、手術の翌日にはリハビリを始める。白土さんは「手術直後は曲げると痛かったけれど、退院後は全然痛みもなく、前より元気に歩いています」と話す。今も毎日、家族で切り盛りするフランス料理店で働く。

 中川さんによると、歩行には筋力も関わるが、痛みが取れることの影響が大きいという。ただ、金属の人工物が入り、半月板や一部の 靱帯じんたい も取り除くので、微妙な感覚の変化を感じる人もいる。また、関節を深く曲げる動作、強い衝撃がかかるスポーツなども制限される。骨粗しょう症が進行し、骨折の危険性が高い人など適さない例もある。

 

進む技術革新

 

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 近年、技術革新も進んだ。その一つが、複数の骨に赤外線の発信器を装着し、骨を切る角度などをモニターで確認しながら行う「ナビゲーション手術」。体重を支えるので、手術では、人工関節の設置角度の正確さが重要だ。12年に診療報酬の加算が付き、導入する病院が増えたという。

 また、膝では、関節の片側だけに行う「 単顆たんか 型」というタイプも使われるようになった。日本人の場合、O脚気味で関節の内側から傷つく例が多い。外側が無傷な場合の選択肢になる。「靱帯や半月板を残せるので手術後の違和感が少なく、安定性も高まる利点がある」(中川さん)という。

 超高齢社会を迎え、変形性関節症は今後も増加が予想されるが、できれば人工関節が必要になるほどの悪化は未然に防ぎたい。重要なのは、関節を支える足腰の筋力と柔軟性の維持のために適度な運動を続けること。人工関節になった後も運動習慣は大切だ。

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