子どもの健康を考える「子なび」
医療・健康・介護のコラム
発達障害(15)二次障害 育て方が関係
発達障害では、精神科医で信州大付属病院子どものこころ診療部長の本田秀夫さんに聞きます。(聞き手・松本航介)
発達障害の子どもの支援を考える上で、「育て方」はとても大切です。前回お話ししたように、発達障害そのものはおそらく何らかの脳の異常によって起きますが、発達障害として生まれてきた後、どんな大人に育つかということには、育て方が関係するのです。
私は、育て方を四つのタイプに分けて考えています。一つ目は、その子の発達障害の特性をきちんと理解し、特性に応じて必要なことを身につけさせるという育て方です。特性に合わないことは、無理に教え込もうとはしません。
発達障害の子は、興味の対象が偏りやすいという特性があります。そのため、目標を定める時は、本人が興味を持って取り組めるような目標と方法を考える必要があります。
その際、少しの努力ですぐに達成できるような目標を作ることが大切です。ほかの子には簡単にできることでも発達障害の子にはうまくできないことがあります。「できるはずだ」と思ってほかの子と同じ目標を掲げ続けると、その子はつらくなってしまいます。
コミュニケーションが苦手な子は小さい時はできるだけ叱らずに褒めてください。叱られると人に相談する意欲が下がってしまいます。なるべく気軽に人に相談し、協力してもらいながら何かを進めていくということを習慣づけることが大切です。
こういう育て方を幼い頃から行っていくと、うつなどの二次障害を防げるのです。
ところが、次の三つの育て方では、二次障害が起きやすくなります。わが国の多くの親御さんが「普通」と思っている育て方、苦手克服のために訓練を過剰に行う育て方、本人の意志に任せ過ぎる育て方。この三つです。
【略歴】
本田秀夫(ほんだ・ひでお)
1964年、大阪府豊中市生まれ。精神科医。信州大医学部付属病院子どものこころ診療部部長・診療教授。日本自閉症協会理事。著書に「自閉症スペクトラム」など。
【関連記事】
高度社会の中で生き場所を見つける作業
寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受
遺伝的要因以外にも人生や成長の障害は沢山あり、うつ症状や挫折は誰しもあるもので、そういうものを経ながら、どうやって自分の生き場所=仕事や居場所=...
遺伝的要因以外にも人生や成長の障害は沢山あり、うつ症状や挫折は誰しもあるもので、そういうものを経ながら、どうやって自分の生き場所=仕事や居場所=生活や家庭を築いていくか。
本田先生が二次障害のエスカレートの予防の重要性を記載されている理由は、発達障害と診断されていないお子さんを持つ沢山の親御さんにも重要だと思います。
発達障害やその傾向だとこじれやすいだけで、大きな挫折から立ち直るのは多くの人に困難です。
本人の意思と努力の誘導が大事になります。
「仕事が人生の全てではないが、仕事は自分の人格や生活の場所を作るものの一つ。」
記憶喪失の主人公のサッカー漫画を読みながら感じたことです。
職業や仕事には様々な関わり方があって、趣味の仕事と稼ぐ仕事が合致する人間は極めて一握りの幸運な人間に過ぎないと思います。
その中で、仕事と趣味とその他の生活のブレンドの比率を考えるのもまた生き方の方策です。
18歳成人も決まりましたが、高度文明化社会では、本当の意味で一人前の自活した大人と言える状況になるのは25歳や30歳を超える場合が多いでしょう。
その中で、教育制度の改革と共に、子供や親御さん側の、教育制度や資格制度、一般人の感覚とのすり合わせも大事になります。
自分自身、医師になった理由は、人の命を救うためにでもなければ、ノーベル賞やそれに類する研究をするためでもなく成り行きです。
しかし、自分の人生の一定時間を直接診療業務とその勉強に割き、若者の人生が壊れないための方策を書くことは自分の仕事と思うようになりました。
自殺数減少のニュースもありましたが、本当の意味で生きている人間が増えないと結局また自殺者は増えていくでしょうし、治安も悪くなります。
ピンクレディーじゃありませんが、精神科医のみならず他人のSOSの多様性に気付いて、構造問題と解決策を考える必要があります。
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発達障害の教育問題は一般市民にも共通する
寺田次郎 六甲学院放射線科不名誉享受
識者もずっと指摘しており、それがゆえに教育の構造改革もついに進行しつつありますが、明治維新以来の脱亜入欧、和魂洋才で、先進国に追いつけ追い越せの...
識者もずっと指摘しており、それがゆえに教育の構造改革もついに進行しつつありますが、明治維新以来の脱亜入欧、和魂洋才で、先進国に追いつけ追い越せのために組まれたシステムがまだ強く残っています。
スポーツの脱水対策もそうですが、「普通」と信じられていることは、現代社会や未来に向けて論拠があるものばかりではありません。
勿論、精神論が100%否定される必要もないですが、精神論の暴走による被害者を防ぐ方策は必要です。
戦争がその代表ですが、人でも物でも、何でも育てて、手入れするより、壊す方が簡単です。
受験戦争もそうですね。
たかが1点で人の運命も人生も大きく変わりますが、不正行為やドーピング級のサポートで支えられた進路がその後心身ともに長続きする可能性はそこまで高くありません。
与えられた学習内容をこなすのも尊重されるべきですが、AIやITがどんどん発達する中で、それらの直接的な重要性は下がっています。
そういう社会の潮流の中で、自閉症でなくても自閉症傾向になって、興味の対象や時間やエネルギーの使い方が偏ったほうが良い部分があります。
受験勉強なんて、せいぜい数科目で、世の中を動かしている応用科目は山ほどあって、しかも、それらへの興味は基礎の数科目への学習を誘導しますから。
軽症の自閉症と自閉症傾向の鑑別は専門家でさえ手を焼くと思いますが、そういう意味でも、子供と社会を繋ぐ教育や育ちの場について議論を喚起していく必要があります。
より大多数を対象にした方が、企業や市町村、政府が動いてくれやすくなると思います。
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