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映画監督 大林宣彦さん

一病息災

[映画監督 大林宣彦さん]肺がん(1)「余命?未定」

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 「転校生」「時をかける少女」など故郷・広島県尾道市を舞台にした青春映画で知られ、近年は戦争をテーマにした作品を発表している。一昨年夏に「肺がん末期で余命3か月」と宣告された。1年4か月後の昨年末、最新作「花筐/HANAGATAMI」が公開された。

[映画監督 大林宣彦さん]肺がん(1)「余命?未定」

 盧溝橋事件(1937年7月)の半年後に生まれた。1歳で父親は出征し、母親の実家である尾道の大家族の中で育った。母方の祖父は病院を経営し、看護師は約60人も。警察署長ら名士が出入りし、天下国家を語った。

 「ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん」と中原中也の詩を口ずさむ叔父にたかいたかいをされ、近づいては遠ざかる天井の木目模様が最も古い記憶だ。生まれる直前に亡くなった中也には「生まれ変わり」と親近感を抱き、結核に倒れた彼の代わりに兵隊に行く。そう幼い心をたぎらせた。

 親戚の女性たちが口ずさんだ与謝野晶子の代表作「君死にたまふことなかれ」の一節「人を殺して死ねよとて二十四までをそだてしや」を聞いて、24歳で立派に戦死する、と受け止めた。今では女性たちのささやかな抗議だったと理解できるのだけれど。

 最新作は太平洋戦争前夜の佐賀県唐津市を舞台にした青春群像劇。こうした原体験が色濃く反映されている。

 病状は落ち着き、今は自覚症状もない。「余命? 未定」。次回作へ燃えている。

  映画監督 大林宣彦さん(80)

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