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安心の設計

介護・シニア

[展望 2018]「自宅で最期」諦めない

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社会保障部長 岡部匡志

[展望 2018]「自宅で最期」諦めない

 高齢化の進展で、ピークの2040年には年間約170万人が亡くなるという。住み慣れた家での 看取みと りを希望する高齢者も多いが、現実は病院で亡くなる人が7割以上。「自宅で逝く」ことを最初から諦めている人も多い。

 「家に帰りたい」。90歳を過ぎた女性患者は酸素マスクを外し、そう言った。

 昨年秋のある日のこと。心不全でその3日前に静岡済生会総合病院(静岡市)へ入院後、安定していた女性の容体が、朝から急変した。主治医が死期が近いことを家族に伝えると、本人や家族は帰宅を強く希望した。

 「この気持ちをかなえたい」と考えた主治医や看護師は、同院の退院支援担当の神谷裕子看護師(54)に連絡。神谷看護師も本人の意思を確認し、退院の準備を急いだ。

 女性はそれまで比較的丈夫だったため、地元で看取ってくれる医師の確保が難題だった。死亡診断のためには、医師が患者の生前の状態を知らなければならない。すぐに往診してくれる医師を探すのは大変だったが、日頃から同院と連携し、年間40例ほど看取りに携わる遠藤博之医師(53)が急な依頼を引き受けてくれた。担当の訪問看護師やケアマネジャーも急きょ決めた。呼吸が楽になるように、女性の家に介護用ベッドも入れた。

 その日の午後2時、女性は自宅に戻り、遠藤医師は午後10時、結果的に最初で最後になった往診に訪れた。遠藤医師が何度断っても、家族は医師が車に乗り込むまで見送ったという。「夜中に押しかけて、こんなに感謝される仕事が他にあるでしょうか。医師 冥利みょうり に尽きます」と遠藤医師は振り返る。

 翌朝6時半過ぎ、訪問看護師から連絡が入り、遠藤医師が急行すると、すでに女性は息を引き取っていた。予想外に早く訪れた最期だったが、安らかな顔だった。

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 厚生労働省の調査では、6割を超える国民が「最期まで自宅で療養することは困難」と考えていた。「家族に負担がかかる」「症状急変時の対応に不安」「往診の医師がいない」などが主な理由だった。

 看護師歴32年のベテランの神谷看護師は「病院と地域のネットワークがあれば、自宅の看取りはできます。本人や家族は遠慮せずに、『家に帰りたい』と言ってほしい」と訴える。遠藤医師も「死という厳粛な場面に、医師ら他人が介在する形が望ましいとは思わない。出来る限り自宅で、本人と家族だけで逝かせてあげたい」と言う。

 どうすれば、安心して家で最期を迎えることができるのか。私たちは今年、このテーマにこだわって紙面を作ろうと考えている。

  社会保障部  介護や医療、年金、障害者、子育て、働き方、貧困などの分野を取材している。部員は13人の小所帯。 平昌ピョンチャン パラリンピックにも記者を派遣する。

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