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僕、認知症です~丹野智文43歳のノート

コラム

認知症とともに、もうすぐ5年

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認知症とともに、もうすぐ5年

「おれんじドア」などの活動に一緒に取り組む仲間に囲まれる私(左から2人目)。認知症になったおかげで、色々な人との出会いがありました

外見は普通でも病気です

 新しい年が明けました。春が来れば、若年性認知症と診断されてから丸5年になります。当時、39歳になったばかりだった私も、2月には44回目の誕生日を迎えます。

 現在も、診断を受けた大学病院に2か月に1度、通っています。アルツハイマー型認知症を根本的に治す方法は見つかっていないのですが、神経の情報伝達を助けて、症状が進むのを遅らせる薬を処方してもらっています。

 脳のMRI(磁気共鳴画像)を撮ると、少し縮んではいるものの、3年前と比較してそれほど大きな変化は見られないとのことでした。自動車販売会社での勤務を続けながら、認知症関連の活動に取り組み、休日も家族や仲間と楽しく過ごす。そんな充実した毎日のおかげで、病気の進行が抑えられているのかもしれません。

 私の講演を聴いて、医師などの専門家も、「丹野さんが認知症というのは、間違いなのでは」ということがあります。しかし私自身は、健常者とは決定的に違う何かが自分に起きているのも感じています。病気でなくては説明がつかないような症状が、間違いなくあるのです。

見覚えのある顔…実は知らない人

 アルツハイマーの症状として、まず記憶障害があげられますが、それがどんな形で現れるのかは、実は人によってかなり違います。

 沖縄での講演会で出会った若年性認知症の男性は、前の日のことを全て忘れてしまうと言っていました。私の場合はそうではなく、突然、記憶が断片的に抜け落ちる感じです。ほんの数秒前のことを忘れてしまう一方で、何年も前のことをはっきりと覚えていたりもします。脳の仕組みは、本当に不思議です。

 毎日、顔を合わせている人でも、不意に誰なのか分からなくなることもよくあります。単に名前や顔を忘れてしまうだけでなく、相手が自分の知っている人かどうかも判別できなくなってしまい、通りすがりの人が皆、知り合いのように思えたりもするのです。「脳が人の顔を誤認識しているような感じ」と言えば、感覚が伝わるでしょうか?

 人混みの中で何だか見覚えがある顔を見つけて、声をかけようかと思っていると、相手は素通りしていくのです。知人だと思って話しかけたら違っていて、「えっ?」と驚かれたこともあります。

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丹野智文(たんの・ともふみ)

 おれんじドア実行委員会代表

 1974年、宮城県生まれ。東北学院大学(仙台市)を卒業後、県内のトヨタ系列の自動車販売会社に就職。トップセールスマンとして活躍していた2013年、39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断を受ける。同年、「認知症の人と家族の会宮城県支部」の「若年認知症のつどい『翼』」に参加。14年には、全国の認知症の仲間とともに、国内初の当事者団体「日本認知症ワーキンググループ」を設立した。15年から、認知症の人が、不安を持つ当事者の相談を受ける「おれんじドア」を仙台市内で毎月、開いている。著書に、「丹野智文 笑顔で生きる -認知症とともに-」(文芸春秋)。

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