医療大全
医療大全
【子どもを守る】親の思い(1)「1滴でも母乳育児」に光明
少子化やインターネットの普及、遊び場の減少――。子どもを巡る環境は、親の世代とは大きく変わっている。未来を担う子どもは親だけでなく、社会にとっても宝。心身ともに健やかな成長を守るには何が必要なのか。まず、親の思いを聞いてみた。
ベビーマッサージを教える蛯原英里さん
「がんばっていますね。1滴でも立派な母乳育児ですよ」
2014年9月、都内の小児科。ベビーマッサージ教室を主宰する 蛯原英里 さん(38)は、まな娘の生後1か月健診で、医師の思いがけない言葉に救われる思いがした。
初めての育児に特に不安はなかった。看護師として6年間、新生児集中治療室(NICU)に勤務した経験があったからだ。
ところが産後1週間で自宅に戻ると、母乳育児の壁は想像以上に高かった。
母乳は消化がよく、病気を防ぐ成分が豊富。NICU勤務時、じかに授乳できないママが必死に搾って届けてくれた母乳を、大切に赤ちゃんにあげていた。
だから「何が何でも母乳」と必死だった。娘が泣くとすぐ授乳。眠ったら電動の器械で搾乳した。刺激して母乳の量を増やしたかった。搾った母乳は哺乳瓶に入れ、日時を記入したシールを貼って冷蔵庫に保管。こうした作業や娘の様子を育児日記に書き終えるころには、また泣き声が響き、次の授乳――。
寝不足と疲れがピークに達した産後2週間目、産院の母乳外来を受診した。娘の体重は100グラムちょっとしか増えていなかった。助産師のアドバイスで少し粉ミルクを足すことにした。
その晩、急に涙があふれ、止まらなくなった。「満足に母乳が出ない駄目なママ」と自分を責めた。夫(42)が「そんなことはない」と慰めても耳に入らなかった。
この記事は読者会員限定です。
読売新聞の購読者は、読者会員登録(無料)をしていただくと閲覧できます。
【関連記事】