ウェルネスとーく
医療・健康・介護のコラム
[日本チャイルドボディケア協会代表 蛯原英里さん](下)「これだ!」ピンと来て迷わず退職 ベビーマッサージの道へ
「ふれあい」が絆を育てる
――ベビーマッサージとの出会いは、NICUの看護師をやめた後だと聞きました。
一般企業で働いていた時です。書店で偶然、手にした本で知りました。「私がしたいのはこれだ!」とピンと来ました。愛情たっぷりのマッサージで、親子の絆を深めて、赤ちゃんの血行促進や安心につながる。すぐに退職して、ベビーマッサージの資格を取得しました。
――迷いがなかったのですね
はい。自分のこれまでの経験が一本の線でつながったような感覚でした。
――それは、どのような経験だったのでしょうか
小学校4年生の冬休み、虫垂炎で入院しました。家族から初めて離れ、年末年始を過ごしました。病棟の看護師さんが優しくしてくれて、大みそかも寝るまで寄り添ってくれました。背中にあててくれた手のぬくもりは忘れられません。看護師になろうと思ったきっかけです。
看護師になると、NICU(新生児集中治療室)に配属されました。ご両親が愛情を持って触れるだけで、保育器の赤ちゃんの容体が安定するのです。そうして親子の絆が育まれていきます。そこでも、ふれあうことの素晴らしさを知りました。
――そういえば、主宰する教室の名前も「FUREAI LAB.」ですね。
親子だけじゃなくて、参加するママ同士もつながってほしい。そんな願いからです。今は近所付き合いも薄れて、子育て中のママや先輩ママとつながりにくい。「成長が遅いのでは」「寝付きが悪い」といった悩みがあっても、相談できる相手がいないのです。だからスマホで検索する。ネットじゃなく、人とつながってほしい。
育児とスマホ 使い方次第
――スマホとどうつきあうかも、育児中のママの悩みだと思います。
私自身は、娘といる時は、極力、スマホを使わないようにしていますけれど、時にはLINEのメッセージに返事をすることもあります。
育児でも「スマホがあると助かるな」と思う場面はありますよ。娘が生まれた年の冬、夜中の授乳で心身ともにつらかった時期がありました。宮崎県出身で、寒さが苦手だったこともありました。「ああ、もうダメ」とくじけそうになった時に、ふとスマホで、写真データを収録するアプリを開きました。
娘が生まれてからの写真を順番に見ていくと、「ああ、あの時に戻れないんだな。今の瞬間は今だけなんだ」と、目の前で力強く泣いている娘が、ただただ、いとおしく大切に思えたのです。
――なるほど。スマホでは動画も見られますよね。
娘が大好きなプリキュアの動画を一緒に見ることもあります。イヤイヤ期の時には、「最後の手段」として使いました。泣きわめいて、抱っこしても、なだめても、どうしようもない時でも、スマホで聴かせると不思議と落ち着く曲もありました。それは、夫婦で大好きなRIP SLYMEの「SPEED KING」でした。
いざという時 子を守る備えを
――子育てで大切にしていることは何でしょう。
親が先回りしないで見守ることでしょうか。娘のやりたいという気持ちを大事にしています。いつかは親の目を離れる時が来ます。そこで自分で危険かどうかをある程度、判断できる子どもになってほしいので。そのためには、いざという時は親が守れるようにという準備も欠かせないと思っています。
たとえば、目の前で子どもが事故に遭った時の救命措置を身につけること。不慮の事故の発見者は、母親が一番多いのです。大切なわが子のそんな姿は想像したくないママもいるかもしれませんが、やはり備えてほしい。主宰する教室では、定期的に救急救命士によるママたちへの救命講習を開き、心臓マッサージや、気道に詰まった異物を除く方法を学びます。
――3歳の娘さんには、どう成長してほしいですか。
ふれあいを大切に、目の前に困っている人がいたら、さっと手を差し伸べる優しい人、他人のために考えて行動できる人になってほしいですね。
この前、家族で温泉に行った時に、脱衣所で大泣きしている2歳ぐらいの女の子がいました。娘がさっとその子に駆け寄って、「お歌を歌うとうれしい気持ちになるよ」って、一生懸命、大好きなプリキュアの歌と踊りを見せてあげていました。ささやかだけれど、うれしい出来事でした。
えびはら・えり
1979年、宮崎県生まれ。千葉県内の看護学校を卒業後、同県内の病院のNICU(新生児集中治療室)に6年間勤務。その後、一般企業に勤務している時に、ベビーマッサージと出会う。2015年、日本チャイルドボディケア協会を設立。「ふれ愛」をキーワードに、都内でベビーマッサージやリトミックなどの教室を開催している。双子の姉はモデルの蛯原友里さん。
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