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40代から備えよう「老後のお金」 楢戸ひかる

医療・健康・介護のコラム

人生100年時代に備える「トンチン保険」って何?

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ライフプランは「90歳」から「100歳」に

人生100年時代に備える「トンチン保険」って何?

 マネーライターという仕事柄、お金のプロと雑談をよくします。先日、ファイナンシャルプランナーの竹下さくらさんとお話ししていた時のこと。

 「『LIFE SHIFT~100年時代の人生戦略』(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著/東洋経済新報社刊)という本がよく売れてから、お客様のご相談内容が変わってきましたよね」

 竹下さんは、そう言います。この本では、10年ごとに平均2~3歳のペースで平均寿命が上昇していることを考えると、1967年生まれの50%が92~96歳まで到達すると予想しています。

 これまで、ファイナンシャルプランナーがお客さんのライフプランを考えるとき、90歳までの試算をするのが普通でした。それが、竹下さんによると、「100歳まで試算したいというニーズが多くなってきた」というのです。

 少子高齢化が進んだ将来、公的な年金だけでは老後資金に不十分かもしれない、というのは 第1回目のコラム で触れました。100歳まで生きるとすれば、老後資金をどう用意すればいいのでしょうか?

長生きすればトクする新型保険

 自助努力の手段としてiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)やNISA(ニーサ・少額投資非課税制度)にも関心は高まってはいます。ですが、投資アレルギーの強い日本では、保険会社が販売する「個人年金保険」の人気がいまだに根強いようです。

 ただ、2017年4月以降、貯蓄性が高い年金保険などは売り止めや保険料値上げが相次いでいます。老後資金用の金融商品として、検討の土台に乗るものは少なくなっているのです。

 そんな状況の中、長生きリスクに備える終身年金保険が登場しました。「トンチン保険」です。

 トンチン保険とは、イタリア人の銀行家ロレンツォ・トンティが考えた保険制度のことで、個人年金保険の一種です。国内では、16年4月に日本生命が販売を開始し、18年1月現在、4社で取り扱われています。

 商品の特徴をひとことで言うと、「長生きをすると得する保険」。  

 年金受取を開始する年齢(65歳など契約時に定めた年齢)までに解約した場合の「解約返戻金」や、死亡した場合の「死亡返戻金」は、従来の保険の7割程度しかもらえません。その代わり、受け取れる年金額は大きくなり、それが終身(もしくは30年)続きます。つまり、長生きすればトクな仕組みです。

 竹下さんによると、受け取る年金額が払い込んだ保険料を上回る分岐点は、試算上「80代後半から90代前半」になるそうです。

ネックは「50歳から」の加入年齢と保険料

 取り扱っているのは、下の表の4社です。かんぽ生命も参入し、今後、注目度はアップしていくことでしょう。

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 ただし、利点があれば、ネックもあります。その一つは、50歳からしか入れないこと。もっとも、70歳から年額60万円の年金を生涯(もしくは30年)もらうための保険料は、月額6万円程度。住宅ローン返済や教育費負担が重い世代には、現実問題として厳しい金額かもしれませんね。40代の私たちは、「そういう保険も出てきたのだな」と認識しておくぐらいでよいのではないでしょうか。

老後のお金を「ストック」から「フロー」に

 最初に触れた「LIFE SHIFT」は、人生が100年になることによって、「教育→仕事→老後」という3ステージ型の人生モデルは崩壊していくと主張しています。そうした時代を生きる私たちに必要な発想は何か?

 それは老後に備えて、ストック(お金を貯めること)ではなく、いかにフロー(お金の流れ)を作っておくか、ということです。

 自分で稼ぐことができない老後に、ストックである貯蓄を取り崩していくことは、不安とストレスが高いものです。その点、トンチン保険などの終身年金保険なら、保険料を支払っておけば、一生涯にわたって年金をフローとしてもらえます。「その安心感は大きい」と、竹下さんも言います。

 ストックをフローにする手段の一つとして、トンチン保険のような商品を利用するのは、アリだと私は思うのです。(楢戸ひかる マネーライター)

(イラスト:西島秀慎)

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楢戸 ひかる(ならと・ひかる)

マネーライター
 1969年生まれ。大手商社に勤務後、90年代よりマネー記事を執筆。「誰もが安心してお金のことを学ぶ場」である「お金のリビング」を主宰。その入り口として、「ザックリ家計簿」ワークショップをオンラインにて開講中。詳しくはホームページ「主婦er」で。
 お金の記事だけでなく、「家族」や「暮らし」についてもコンテンツ更新中。

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