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[初めての介護](9)家庭的なグループホーム

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認知症、自立した生活

[初めての介護](9)家庭的なグループホーム

 認知症が進み、自宅での暮らしが難しくなった場合、グループホームに移り住む方法がある。認知症専門の小規模な介護施設で、全国に約1万3200か所、利用者は計約19万5000人に上る。都市部を中心に入居まで時間がかかることも少なくないので、早めの検討が必要だ。

 「買い物に行きましょうか」。東京都文京区の住宅街にあるグループホーム「お寺のよこ」。職員が声をかけると、入居者の長島ハナさん(91)が、張り切って外出の準備を始めた。

 長島さんは同区内で一人暮らしをしていたが、認知症のため物を買い過ぎたり、火元の管理が難しくなったりしたため、1年前に入居した。

 「お寺のよこ」では、76~91歳の9人が暮らす。職員は日中3人、夜間1人。何でも介護するのではなく、入居者と一緒に食事の準備や掃除、洗濯などを行う。認知症になっても、できるだけ自立した暮らしを送ってもらうためだ。長島さんは、職員とともに近くの八百屋へ行くのが日課となっている。

 認知症の人は、大勢で過ごすのが苦手な傾向がある。グループホームでは、5~9人で落ち着いて暮らせる家庭的な環境を整えている。一人ひとりに個室が確保され、入居者同士が交流する共用スペースもある。入居者に、自分の家のようになじんでもらうため、民家を活用したタイプも多い。「お寺のよこ」も3階建ての民家を使っている。

 日々のケアも、少人数ならではだ。「お寺のよこ」では、お金や大事な物を盗まれたと訴える「物 られ妄想」がある入居者に対し、職員は妄想を否定せず、一緒に捜す。管理者の光岡賢一さんは「行動の背景にある思いをくみ取り、時間をかけて対応することで、少しずつ落ち着いていく」と話す。

 グループホームの対象は、市区町村の要介護認定で「要支援2」以上と判定された人。入居できるのは原則、住所のある市区町村内のグループホームに限られる。

 介護保険を利用できるので、介護費用の1~2割の自己負担ですむ。施設によって異なるが、自己負担分に家賃や食費、光熱費などを合わせ月10万~15万円程度が一般的だ。

 

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 満員のため、希望してもすぐに入れない場合がある。日本認知症グループホーム協会の2015年度の調査では、1施設あたり平均5.5人が入居を待っている。

 「お寺のよこ」を運営するNPO法人「ミニケアホームきみさんち」の林田俊弘理事長は、「自宅での暮らしが本当に難しくなってからではなく、物忘れが気になる程度の段階から探し始めるとよい」とアドバイスする。相談先は、担当のケアマネジャー、市区町村の役所、最寄りの地域包括支援センターなどだ。

 厚生労働省の推計によると、認知症の高齢者は12年時点で全国に462万人。団塊の世代が全員75歳以上になる25年には730万人に達する。グループホームのニーズも高まりそうだ。

医療や看取り 体制の確認を

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 グループホームの多くは看護師がいないため、医療機関との連携や 看取みと りの体制に注意して選びたい。

 日本認知症グループホーム協会の2015年度の調査によると、入居者がグループホームを退去する理由は、「医療ニーズの増加」が34.5%と最も多く、次は「長期入院」が23.4%だった。

 また同調査によると、看取りの体制を整えている施設は約6割にとどまる。

 (粂文野)

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