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子どもの背がなかなか伸びない「低身長」…骨の発育中に、ホルモン注射を
子どもの背がなかなか伸びない低身長は、ホルモンの異常か、厄介な病気のサインかもしれません。逆に、突然伸びる高身長も要注意です。年齢ごとの身長をグラフにして異常を見つけ、成長期を逃さないよう早めに受診することが大切です。(山崎光祥)
なぜ起きる?
体の成長には、特に脳下垂体から分泌される「成長ホルモン」や「甲状腺ホルモン」、思春期には「性ホルモン」の3種類が大きく関わります。そのいずれかが病気で十分に出なければ、背は伸びなくなります。
また、心臓病や肝臓病、腎臓病などの慢性疾患、脳下垂体の近くの脳腫瘍、アミノ代謝異常症なども、栄養不足やホルモン異常を起こし、低身長の原因になることが知られています。
低身長の中で比較的多いのは「成長ホルモン分泌不全性低身長症」、胎児期の発育不全が原因の「SGA性低身長症」、女の子に特有の染色体異常「ターナー症候群」で、それぞれ1割近くを占めます。いずれもホルモンの異常を起こします。
一方、小学校の中学年ぐらいまでに、思春期を迎えて急激に背が伸びれば、性ホルモンが過剰になる「思春期早発症(おませ)」が疑われます。骨が普通より早く成熟しきってしまうので、結果的には低身長になります。
発見法は?
小学校の中で極端に身長が低く、1年間の伸びが5センチ以下ならば、低身長か、低身長になる可能性が高いと考えられます。詳しく調べるには、年齢ごとの身長をグラフにする「成長曲線」が便利です。日本小児内分泌学会のホームページなどからもダウンロードできます。
成長曲線を描くと、背が高くなるスピードが平均的か、外れているかが確かめられます。同じ年齢、同じ性別の子100人のうち、下からおよそ2番目まで(マイナス2SD)か、上からおよそ2番目まで(プラス2SD)にそれぞれ該当すれば、異常の可能性があります。
大人になった時の予測身長も参考になります。両親の身長を足した値に、男子は「13」を足し、女子は「13」を引いてから「2」で割って計算します。
男女ともに誤差がありますが、予測値が現在の成長曲線の延長線から著しく外れていれば、小児内分泌専門医や、公益財団法人・成長科学協会の地区委員らに相談してください。地区委員は協会のホームページ(http://www.fgs.or.jp/)の「小児疾患地区委員」に掲載されています。
どう治すの?
低身長でも7、8割は体質や遺伝によるもので、病気ではありません。成長ホルモンの異常があれば、成長ホルモン製剤の注射を毎晩、寝る前に行います。製剤は高価ですが、血液検査で一定の基準を満たせば、健康保険が使え、国の医療費助成の対象になります。SGA性低身長症、ターナー症候群、軟骨無形成症などにも保険がききます。
ただ、骨の発育が終わっていれば、注射の効果はありません。早く治療を始めるほど効果が期待できます。
予防には?
適度なストレスは問題になりませんが、睡眠や運動が不足したり、育児放棄、いじめなどで過度なストレスが続いたりすれば、成長ホルモンは出にくくなります。空腹を感じない程度の食事量や、栄養バランスも重要です。
たにざわこどもクリニック(兵庫県西宮市)の谷澤隆邦院長(兵庫医科大名誉教授)は「よく食べ、よく遊び、よく学び、よく寝るというライフスタイルを心掛けてあげましょう」と呼びかけています。
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