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梅毒患者、全国で急増…主婦・OLにも感染拡大

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梅毒患者、全国で急増…主婦・OLにも感染拡大

 性感染症の梅毒の患者が全国で急増している。1993年以降、20年間にわたって1000人を下回り、長らく「過去の病気」と受け止められていたが、2013年に再び1000人を超えてから増加が著しく、今年は44年ぶりに5000人を上回った。自治体や専門家は危機感を強めるが、勢いはしばらく収まりそうにない。(佐々木栄)

性的接触

 「ついに来たかと。覚悟はしていたけど、まさか自分がかかるなんて」

 近畿地方の風俗店で働く30歳代女性は今秋、毎月受けている性感染症の検査で、梅毒と診断された。同業の友人が2年前に感染して以来、心配はしていた。感染直後だったようで自覚症状はなかった。抗菌薬を1か月飲んで治し、仕事に復帰したが、「再感染の怖さは常にある」と明かした。

 感染後によくみられる発疹や潰瘍は、痛みやかゆみを伴わないことが多く、しばらくすると消える。外見上は異常がないように見えても感染力は強く、性交渉で相手にうつる。コンドームでも完全には防げない。

 性感染症に詳しい「そねざき古林診療所」(大阪市)の古林敬一所長は「梅毒を診たことがない医師が増えている。梅毒には特有の症状がない一方で、万病のまねをするかのごとく症状が多岐にわたり、誤診されやすい」と説明する。

西日本で顕著

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 「今年の増え方は異常。ただ、感染経路の特定は難しく、対策のしようがない」

 岡山市の担当者は、この1年での激変に困惑する。市内の患者数は昨年(25人)の約4倍の98人(12月1日現在)。若い男女に多く、大半が「いつ、どこで感染したか不明」という。

 市保健所は10月、無料検査ができる場所を記した啓発カードを1万枚つくり、大学や医療機関に配布。「心当たりのある人は検査を受け、陽性ならば関係を持った相手に速やかに伝えてほしい」と呼びかける。

 梅毒は、先進国では男性同士の性的接触での感染が多い病気だが、国内では異性間での感染が増えており、特に20歳代女性の増加が目立つ。性器クラミジア感染症や りん 菌感染症(淋病)など、主な性感染症の患者数は横ばいの中、梅毒患者の増え方は際立っている。

 国立感染症研究所によると、今年の患者数は今月3日現在、5279人。東京都1626人、大阪府745人と都市部に多いが、影響は地方にも及んでいる。特に西日本で顕著で、熊本県では昨年比4・3倍(65人)、岡山県4倍(160人)、広島県2・5倍(122人)といった状況だ。

妊婦も警戒を

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梅毒検査を呼びかける公設民営の検査機関「chotCASTなんば」(大阪市浪速区で)

 なぜ急増しているのか、詳しい理由は不明だ。世界保健機関(WHO)の統計などによると、世界で毎年600万人が感染し、先進諸国でも増加傾向にある。国内外の移動の活発化が一因とみる専門家は多い。

 性産業の女性と男性客の間での感染拡大、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の普及で気軽に性的接触ができることも理由に挙がっている。

 事態はさらに深刻化している。産婦人科医院「早川クリニック」(大阪市)ではここ2年、主婦やOLの患者が風俗関係の患者数を上回った。早川潤副院長は「相手が1人に定まっている人も安心できない。誰もが警戒すべきだ」と話す。

 母子感染した「先天梅毒」の子どもの数も、国内では長らく1けた台だったが、14年は10人、15年は13人に増加。対処が遅れると将来、失明や難聴などの後遺症を負う恐れもある。早川副院長は「妊娠初期に行う梅毒検査を、妊娠後期にも加えるよう検討した方がいい」と指摘する。

          ◇

【梅毒】  主に性的接触で、病原菌が粘膜や傷から入って感染する。初期には潰瘍などができ、3か月を過ぎると背中や腕などに発疹(バラ疹)が出ることも。抗菌薬で菌を排除できるが、長年放置すると失明や体のまひに至る恐れもある。

17の性感染症に注意

 日本性感染症学会の診断・治療ガイドラインでは、警戒すべき主要な17の性感染症を取り上げている。梅毒、後天性免疫不全症候群(エイズ)、B、C型肝炎などは、全数把握の対象だ。

 17疾患のうち、患者数が特に多いのはクラミジアで、年間約2万4000人の患者が出る。性器ヘルペスウイルス感染症、淋病も新規患者がそれぞれ同約8000~9000人。指定を受けた全国の医療機関が地域の保健所に症例を届け出る。

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