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医療部発

コラム

避難所の環境はなぜひどいままなのか(上)

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過酷な実態 過去の教訓が生かされない

 12月初めに東京都内で開催された「避難所・避難生活学会」の集会で、残念な報告がありました。鳥取県中部地震(2016年10月)、九州北部豪雨(2017年7月)で、家屋被害を受けた住民のために避難所が開設されましたが、その環境は過去の災害の時と同じように過酷でした。

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段ボールベッドで眠る人

 同学会理事で、大阪市八尾市で段ボール製造販売会社「Jパックス」を経営する水谷嘉浩さん(47)によると、鳥取では避難所に段ボールベッドを無償で提供したものの、しばらくして見に行くと使われずに倉庫に入ったまま。福岡県と段ボール業界は災害時に段ボールベッドを供給する協定を結んでいたにもかかわらず、豪雨被害を受けた市の避難所では「被災者からの要望がない」と供給の要請はなかったそうです。水谷さんは「我々の活動が足りない部分もある。協定は生かされなければ意味がない」と悔しそうに言います。

災害関連死の防止に予算を

 雑魚寝におにぎり、菓子パンという避難所での生活は、日本では見慣れた光景です。そんな生活も数日程度なら仕方ないと思うのは健康な人です。人工呼吸器をつけている人、人工透析患者、インスリンが必要な糖尿病患者などは被災地から早急に脱出すべきです。そこまで緊急性がないものの、体が弱った高齢者、食事の配慮などが必要な人もたくさんいます。そんな人が数日、過酷な生活を送るだけで命に危険が及ぶことは、東日本大震災や熊本地震で多数の震災関連死を生んだことからも明らかです。

 熊本地震では約200人が震災関連死と認定されました。読売新聞の集計では、熊本地震から1年時点での170人の震災関連死のうち、少なくとも25%は車中泊、36%は避難所生活を経験していました。避難所のほとんどは床に雑魚寝です。

 震災関連死と認定されれば、遺族には1人あたり250万~500万円の災害弔慰金が支払われます。熊本では弔慰金だけで少なくとも5億円の税金が使われた計算です。段ボールベッドは1基3000円。水谷さんは「家族を失い、弔慰金をもらってうれしい人がいるだろうか。安い費用で関連死を減らす可能性があるほうにお金を使うべきで、段ボールベッドを仮設トイレと同じような災害時の必需品に位置づけてほしい」と話します。

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医療部発12最終300-300

読売新聞東京本社編集局 医療部

1997年に、医療分野を専門に取材する部署としてスタート。2013年4月に部の名称が「医療情報部」から「医療部」に変りました。長期連載「医療ルネサンス」の反響などについて、医療部の記者が交替で執筆します。

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防ぎ得る障害や死亡をどう考えるか?

寺田次郎 六甲学院放射線科不名誉享受

震災関連死で後から500万円払うなら、その予防に500万円が使われるほうが良い気もします。 中古のライトバンを改装した中にベッドをいれたり、既存...

震災関連死で後から500万円払うなら、その予防に500万円が使われるほうが良い気もします。

中古のライトバンを改装した中にベッドをいれたり、既存の中古車を改装して、リクライニング角度やクッションの可変性などをいじれば、プライバシーの問題だけでなく血栓症の可能性はぐっと下がると思います。
対策としても水分や塩分の補給及び早期診断治療にフォーカスが絞られ、予防の観点は抜けています。
エコノミークラス症候群の別称の通り、姿勢の問題も大きな原因と考えられます。
今後の災害発生やタクシーなどの業界への応用も考えて、自動車企業はその辺に技術開発してほしい所ですし、官僚も柔軟な法制度に動いてほしいです。

お金は大事ですが、お金そのものは食べられるわけでも、サービスそのものでもないわけです。

また、こういう現実を考えると、災害が発生した時に助けてもらえないことを前提に生活設計をする必要が出て来るでしょう。

もっとも、地域の荒廃は回りまわって、都心部の生活にも影響を与えるんですけれどもね。

日本の長寿は医学の進歩だけではなく、衛生環境や食生活の改善の問題も大きいものです。

情けは人の為ならずで、せめて関心だけでも向ける必要はあります。
明日は我が身かも知れないのですから。

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