安田記者の「備えあれば」
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判断力低下 後見人の出番
年をとると心配になってくるのが、認知症による判断能力の衰えです。お金の管理や暮らしに必要な契約行為が難しくなります。
私の母は76歳。認知症の兆候はありません。しかし、私の周りで時々、「親が悪徳商法の被害にあった。しっかりしているから大丈夫だと思ったのに……」といった話を耳にします。
認知症に備える方法として、「任意後見制度」を知っておくとよいでしょう。判断能力のあるうちに、自分で後ろ盾となる人=後見人を選んで契約し、判断能力が衰えたら財産管理などを代行してもらうしくみです。公証役場で公正証書を作って契約します。
任意後見人は、信頼できる人であれば身内でもかまいません。例えば、私の母が、私を後見人にしてもよいのです。司法書士や弁護士などにも頼めます。代行してもらう業務は、母の場合、預金や不動産(自宅)の管理、公共料金の支払い、介護サービスの利用申し込みなどが考えられます。
将来、母が認知症と診断され、判断能力が低下した時には、後見人になる人などが家庭裁判所へ行き、後見開始の手続きをします。具体的には、監督人の選任を頼むのです。監督人は、後見人が正しく業務を行っているかをチェックする人。弁護士や司法書士などが選ばれます。こうして任意後見が始まります。
母が最期まで判断能力を保っていれば、後見人の出番はありません。ぜひ、そうあってほしいものです。
ところで、任意後見の契約を結ぶ前に判断能力が落ちてしまったら、どうすればよいのでしょう。その場合は、「法定後見制度」が利用できます。家庭裁判所が選んだ後見人が、本人に代わって財産管理などを行うしくみです。
法定後見制度では、身内が後見人になりたいと希望しても、裁判所は司法書士や弁護士など、身内以外の人を選ぶケースが多いです。裁判所の選任に不服申し立てはできません。
任意後見も法定後見も法律に基づくしくみですが、利用しやすさに課題もあります。次回、費用のことも含め、この点を紹介します。(社会保障部 安田武晴)
このコラムでは、父親を見送った記者(48)が、最期に備えるための情報をお伝えしています。
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