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退院後の在宅生活支える…医療と介護の連携強化

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病院とケアマネ、意見交換

 

退院後の在宅生活支える…医療と介護の連携強化

 大詰めを迎えた診療報酬と介護報酬の同時改定で、最大のテーマのひとつが、高齢者が住み慣れた自宅で暮らすために必要な「医療と介護の連携」の強化だ。実際にどんな取り組みが行われているのか。連携の現場をたずねた。

 静岡市駿河区の静岡済生会総合病院(石山純三院長)で1日、今月中旬に退院し、自宅に戻ることが決まった男性患者(80)と、その妻を含めた11人がテーブルを囲んだ。患者を送り出す主治医、看護師、リハビリ担当者ら病院側と、男性を地域で受け入れる訪問看護師やケアマネジャー、介護福祉士らが、男性の今後の暮らしについて話し合った。

 男性が入院していたのは、患者の在宅復帰を後押しする「地域包括ケア病棟」。看護師の数は急性期病棟より少ないが、リハビリスタッフの数を充実させていることなどが特徴だ。

 男性は約30年前に脳疾患で倒れ、その後も仕事を続けてきたが、最近は半身が不自由に。今回は腎炎を患い、今年10月に入院した。「食べる力が弱まっている。家では吸引器も必要」「それはレンタルと買うのとどっちが得なの? 使い方を奥さんに教えて」「車いすからベッドに移す時のこつ、病室でお見せします」……。活発なやりとりが続いた。

 妻は「入念に退院の準備をしてもらい、安心して家に帰れます」と笑顔を見せた。患者によっては何度も打ち合わせを行うといい、退院支援担当の山田芳枝看護師は「みんな顔見知りだから、率直に意見を言えます」と言う。

 

 団塊の世代が全員75歳以上になる2025年に向けて、政府は医療と介護の一層の連携強化を目指す。早めの退院を促して医療費の削減を図る一方で、できる限り、本人の望む在宅での生活を支えることが狙いだ。

 同院でも10月、「地域包括ケア病棟」を50床、整備した。7割を自宅などに戻すことができれば、診療報酬上も評価される。それまでの急性期病棟に比べて減収になるが、石山院長は「基幹病院の責任として取り組む」という。

 医療と介護の橋渡しのカギが、現場の人間関係だ。情報交換を密にして、自宅でもリハビリをスムーズに続けられれば、機能回復が順調に進むことが厚生労働省のデータでも裏付けられている。ケアマネジャー歴16年で、静岡市ケアマネット協会の近藤久美子研修委員は「以前は、退院の打ち合わせで病院を訪れても、『ケアマネが何しに来たの?』という雰囲気の施設が珍しくなかった」と言う。

 同院では介護職向けの無料研修など、頻繁に顔合わせの機会を作り、顔の見える関係作りに力を入れてきた。同院の地域医療センターの住吉美佐江副センター長は「介護職の人をいかに病院に引き込むかが、連携のポイントです」と話した。

  <同時改定>  医療機関や薬局が受け取る診療報酬と介護事業者が受け取る介護報酬が同じ年に見直されること。診療報酬は2年に1度、介護報酬は3年に1度改定されるため、同時改定は6年に1度行われる。国が進めたい医療・介護政策に取り組む医療機関や介護事業者などの報酬を高くすることで、政策を実現させていく手段にもなっている。

情報共有を促す施策

 

 2018年度の同時改定では、医療と介護の連携を促す様々な施策が打ち出されている。

 まずは退院時の連携だ。これから退院する患者について、病院と介護事業者の情報共有が不十分だと、自宅で適切な医療や介護を受けられなくなる場合がある。この結果、本人や家族が不安になって介護施設への入所につながったり、介護疲れから家族が仕事を辞めたりするケースがある。

 こうした事態を防ぐため、医師や薬剤師らが参加して患者の退院後の生活を話し合う会議に、在宅での介護計画を作るケアマネジャーの出席を促す。ケアマネが退院後に必要な医療やリハビリの内容を把握しながら介護サービスの利用準備を行った際、高い介護報酬を出す方針だ。一方、医療から介護への橋渡しを担う地域包括ケア病棟についても、在宅生活を支える機能を充実させる方向で診療報酬の見直しが検討されている。

 自宅での 看取みと りの際にも医療と介護の連携は重要になる。例えば、容体が変化しやすいがん末期の在宅患者について、医療機関とケアマネが情報共有を密にすることで、迅速に介護サービスの内容を変更できるようにする案などが盛り込まれる見通しだ。

 診療、介護報酬ともに厚生労働相の諮問機関による議論が続いており、来年2月までに結論がまとまる。

 (岡部匡志、田中ひろみ)

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