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梅毒、20歳代女性で急増…潰瘍や発疹が消えても菌増殖

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梅毒、20歳代女性で急増…潰瘍や発疹が消えても菌増殖

 性感染症の梅毒の患者が急増しています。近年は患者数が年間1000人未満で推移していましたが、この数年で急増しており、今年は既に5000人を超えました。早期に診断をつけ、薬で治療し、病気を広げないことが大切です。(佐々木栄)

なぜ起きる?

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 「梅毒トレポネーマ」という細菌に感染して、発症します。主に性的接触を通じて菌が粘膜や皮膚の傷から入ります。口や肛門からも感染します。

 国内では終戦直後、患者が年間20万人を超えていましたが、1990年代前半には1000人を切りました。でも、2013年に再び1000人を超え、今年は11月19日時点で5053人。5000人を超えたのは44年ぶりです。

 患者は20~40歳代の男性に多く、以前は男性の同性間での感染が目立ちましたが、今は異性間での感染が増えました。20歳代の女性の増加も顕著です。専門家の間では、性産業に従事する女性と客の男性に広がっていると推測されています。大都市に集中していますが、地方でも増えています。

どんな症状?

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 感染から3~6週間で、感染部位に潰瘍ができたり、股関節付近や首のリンパ節が腫れたりします。「1期梅毒」といわれます。潰瘍は痛みを伴わないことが多く、特に女性は気づかない場合が多いです。

 3か月たつと、バラの花びらが散ったような「バラ疹」という赤っぽい発疹が現れます。通常、痛みやかゆみはありません。皮膚が盛り上がる発疹や首のリンパ節の腫れが出ることもあります。これらが「2期梅毒」です。

 1~2期の症状は自然に消えますが、菌は体内で増殖しており、人に感染させる危険性が高いです。一部の患者に髄膜炎や目、脳の異常が出ることもあります。

 治療せずに放置すると、弁膜症などの心臓の病気や、認知症のような脳の障害、失明など重い症状が出ることがあります。「晩期梅毒」といい、感染から数年~数十年後に症状が出ます。

 妊婦が感染すると胎児も菌に侵されます。「先天梅毒」と呼ばれ、胎児の肝臓肥大などで分かることがある一方で、感染が見逃され、学童期の視力低下などで気づくこともあります。

どう治すの?

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 感染すると血液中に菌を攻撃する抗体ができます。感染の有無は、採血して抗体の量(抗体価)を測って診断します。感染から3週間未満では、検査で確定できないこともあります。

 治療にはペニシリン系の抗菌薬の服用が有効です。1期は2~4週間、2期は4~8週間、晩期は12週間、飲むのが目安です。服用後、高熱が出ることがありますが、飲みきることが重要です。治療後、抗体価が基準値以下になったことを確認します。薬を飲めば菌は排除でき、症状も治まりますが、治療が遅れれば後遺症が残ることがあります。

 日本性感染症学会代議員で、谷口病院(大阪府泉佐野市)の谷口武院長は「リスクの高い不特定多数の性的接触は避けること」と強調します。コンドームの予防効果は限定的です。無料検査を提供する保健所は多く、心配がある人は検査を受けましょう。感染が分かれば速やかにパートナーに知らせることが大切です。完治するまで性的接触は厳禁です。

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