田村編集委員の「新・医療のことば」
医療・健康・介護のコラム
費用対効果評価…保険医療にも経済性を考慮
「費用対効果が良い」とか「費用対効果が悪い」とかいう言い方は日常的によく使います。それでは、医療における「費用対効果評価」とは、具体的にどんなことを言うのでしょう。
言うまでもなく、薬の価値はどれだけ病気を治せるかにあります。新薬であれば、既存のものに比べて症状をどれだけ改善できるかや、死亡率を下げられるかで、その力(有用性)が評価されます。
「費用対効果評価」は、有用性だけでなく、どれだけ経済的かも評価に加えるものです。効果が同じなら費用が少ない方が評価は高いし、費用がかかる割に病気を治す力が小さければ、評価は低くなります。
イギリスの「ナイス」
医療に費用対効果という「ものさし」の導入が検討されるようになったのは、厳しい医療保険財政に加えて、高額な生物学的製剤などの治療薬が相次いで登場しているからです。
海外では、医療を費用対効果評価で測る動きが進んでいます。中でもよく知られているのが、イギリスの「国立医療技術評価機構(National Institute for Health and Care Excellence=NICE)」(ナイス)です。新薬などについて経済的な面を含めて評価し、使用を「推奨する」か「推奨しない」かを勧告します。
質も見る「クオリー」
「質調整生存年(Quality Adjusted Life Year=QALY)」(クオリー)は、費用対効果をめぐって、よく登場する言葉です。
同じ生存期間でも、日常と変わらない生活を送れたか、入院して寝たきりだったかでは、大きな違いがあります。クオリーは、治療によって生存した「期間の長さ」と、どれくらいの「生活の質」を保てたかを合わせて評価しようというものです。
1クオリーは、「完全に健康な状態で1年間生存できた」と仮定した場合にかかる費用です。1クオリーにいくらかかるかが判断の基準になります。
二つの薬を比較する「アイサー」
「増分費用効果比(Incremental Cost Effectiveness Ratio=ICER)」(アイサー)という指標もあります。新しい治療を既存の治療と比較する際に用いられます。
新薬は、おおむね既存薬よりも高いものです。そこで、「費用の増加分あたりに得られる効果」の大きさによって、新薬がもたらす利益を評価します。
新薬の方が「安くて効果も高い」という場合は、この指標は使えません――と言うか、使う必要もありません。
総合的に評価する「アプレイザル」
クオリーは、様々な分野の薬などについて、同じ指標で表せることができるという点で優れています。ただし、単純な生存期間の比較と異なり、生活の質の評価は簡単にできません。
最終的な評価には、社会的な影響なども考慮した調整が加えられます。これらの最終調整も含めたものが「アプレイザル」と呼ばれる総合的評価です。
2018年度の本格導入は見送り
日本ではどうなっているでしょうか?
国は、薬や医療機器の価格について2018年度から「費用対効果評価」の本格導入を目指し、高額な薬の象徴とされた「オプジーボ」など7種類の薬と6種類の医療機器の計13品目について、試行的に評価を行っていました。
ところが、作業も大詰めに来た11月、一部の品目において国側の分析と企業側の分析結果が「大きく異なっている」など、いくつかの問題点が明らかになりました。
試行的評価が進められた13品目のうち、18年度はとりあえず限定的な適用にとどまる模様。本格導入は19年度以降になる見通しです。(田村良彦 読売新聞東京本社編集委員)
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勝俣範之先生が保険医療での標準医療を勧め、トンデモ医療に専門医さえ手を染めるケースに警鐘を鳴らしています。 そこで湧くのは、標準医療準拠の医療は...
勝俣範之先生が保険医療での標準医療を勧め、トンデモ医療に専門医さえ手を染めるケースに警鐘を鳴らしています。
そこで湧くのは、標準医療準拠の医療は必ず保険診療であるべきなのか、標準医療で儲けてはだめなのか、という疑問です。
良くも悪くも、安定した40兆円産業と結びついた制度では昨今の不動産や高額機器の市場の変化についていけていないのだと思います。
その中で、制度の平等とより多くの患者さんにより良い医療を届けることの利害が一部対立します。
大学病院の外来枠をはみ出し過ぎる予約の問題も、医師や病院を指名するという部分の料金を違う形で乗せ換えることで緩和できるのではないかと思います。
(大病院でしかできない手術や一部の治療が人質に取られていることと大病院グループのクリニックが患者を過度に抱え込むことが、かかりつけ医推進のボトルネック)
医療格差の住み分けの可視化の問題が壁なのでしょうが、実際問題、金と時間とエネルギーをかけて医者になったのに、高額の薬剤処方や手術に報酬が集中すれば、医療の一部が変な方向に向きます。
高額機器や不動産の償却のために、診断や治療が捻じ曲げられるリスクを勘案しないと、「癌放置療法」の議論と同じで、やらない方がましになる可能性もあります。
かかりつけ医の普及や医療の標準化も、その質のコントロールが出来なければ、寿命や健康寿命の延長に繋がらないと思います。
都会と田舎では病院の連携のありようも変わりますし、同じ診療体系で行うギャップを埋める何かが必要でしょう。
常勤医の制約が一部変わるそうですが、給与や仕事分担に関する柔軟性も重要でしょう。
軽症だけでも的確にさばくことのできる医師は、重症患者に集中できる人的資源を産みます。
また、慢性疾患の特定患者の時間を集中させれば、専門医の効率運用に繋がります。
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個と集団のCHOOSING WISELY
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他紙でも記事が出ました。 採算と人の情、医療サイドの人事と政治が絡んで、賢く選べない現実は、地域や集団、国家を巻き込んだ包括的な問題と再定義しな...
他紙でも記事が出ました。
採算と人の情、医療サイドの人事と政治が絡んで、賢く選べない現実は、地域や集団、国家を巻き込んだ包括的な問題と再定義しないと解決不能です。
また、ある大学の入試の出題ミスのお詫びと損失補てんのニュースも出ました。
誤った解答分の修正だけでなく、誤った問題に使った時間と集中力で人生を狂わせたより多くの学生を思えば罪深い事です。
一方で、遅れながらも公表し、最小限の被害者だけでも救済に動いた大学の見識には納得します。
どんな工夫をしても、人間の仕事は必ず不完全です。
そして、嘘を隠すための嘘は大きくなるもので、その被害を食い止めました。
反省や公正はキレイごとではなく、組織を大きくする手段の一つです。
そして、ある地域のいじめ自殺の記事もありました。
同級生や教師も人間の集団の論理の闇と暴発が怖くて触れない時もあるでしょう。
いじめは社会形成時の歪みのエスカレートの事象です。
いつか自分や家族が被害者になると知っていてもやめられないのは人間の本質が愚かだからです。
学校も、警察も、自治体も、「何をやっていたのか」というそしりが怖くなれば不祥事の隠蔽に走ります。
被害者を守るよりも、被害者を無視したり、罪や汚名を着せる方が集団の評判という利益になる怖さです。
トンデモ医療だけでなく、トンデモ裁判というものもあるそうです。
医療もそうですが、閉鎖性と専門性が悪用されるわけです。
結局、医療も法曹も技術に過ぎず、運用するのは人間であり、少なからず母集団が同じ団体なので集団の論理が勝つわけです。
どこの市町村や宗教団体も愛や正義と人権を謳いますが、集団のモラルというのは間接所見を見るほうが明らかです。
CTで消化管の癌を直接探すよりも、異常なリンパ節や腹水貯留などを見るほうが簡単なのと同じです。
第三者委員会の説明や結果よりも人選なんかが真実を語ります。
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保険診療に繋がるチャンネルを考察する
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「関西を日本観光のハブに」という新聞記事を見かけました。 日本の産業と人口を吸収し続ける関東へ取られたエネルギーを、アジアのLCC特需で穴埋めす...
「関西を日本観光のハブに」という新聞記事を見かけました。
日本の産業と人口を吸収し続ける関東へ取られたエネルギーを、アジアのLCC特需で穴埋めする公算でしょう。
地域への健診の時には沢山の外国人観光客を見かけます。
健診を始めた数年前との違いは、関西の財界の本気度が変わってきたからでしょう。
そういう政治経済の要因が病院新築移転先にも関わっていると気付きます。
さて、日本の地域の病院は日本人を保険診療するために設計されていますし、その為の人材も若干足りていない場合もあります。
そこに、英語だけならまだしも、欧州諸語、アジアの各言語で急患が来たらどうするのでしょうか?
日本の地方都市ではなく、アジアの地方都市、世界の地域国家としての立ち位置を考えると、完璧でなくても段階的に対策を練らないといけません。
医療通訳やIT環境もそうですが、やはり、画像診断という非言語コミュニケーションがキーになると思います。
細かい表現はわからなくても、キーの診断と根拠が分かれば、各国言語で調べてもらえばいいわけです。
(人種さを考慮した治療の選択などは少し工夫が必要ですが。)
滅多に起こることではないですが、準備をしてほどほどの結果になるとリピーターも増えますし、地域や病院が潤って、保険診療にも還元されます。
とか、書きながら、自分は欧州に引っ越して、日本人を相手にする方が正しい気がしてきました。
難解になりますが、コミュニケーションや政治経済との繋がりを意識したうえで保険診療の全体最適に取り組む方が良いですね。
人材の育成には時間も手間もかかります。
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