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宋美玄のママライフ実況中継

妊娠・育児・性の悩み

赤ちゃん連れで議会 もっとやって!

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赤ちゃん連れで議会 もっとやって!

踏切を見ながらごはんを食べる息子です

 熊本市議会の女性議員が議場に生後7か月の赤ちゃんを同伴し、認められなかったことが話題となっています。この件がきっかけとなり、職場に子供を同伴することの是非や、子供の預け先をどうするかなど、議論が活発化しています。多くの人が賛否それぞれの意見を出していますが、私も自分の考えを述べたいと思います。

パフォーマンスとしては成功

 私も子供の預け先が手配できないときに、取材の場に同席させたり、講演会の控室で誰かに見てもらったりすることがよくあります。その一方、自分の仕事先である医療機関に子供を連れて行くことは、まずありません。

 子供の月齢・年齢や仕事の内容によって状況は大きく変わってくるので、子連れ出勤を、一元的に推進すべきだとか、ダメだとか言うべきではないでしょう。議会という職場は、海外では乳児連れの事例もあり、絶対にダメな場所ではないと思います。

 女性議員は新聞の取材に対して、子供を預ける方法も模索したが、「子育てと仕事の両立を『個人的なこと』という態度の議会事務局の対応に対し、『これだけの社会問題を個人の問題と片付けるのか』という思いがふつふつと湧いてきた」「声を聞いてもらうには、もう議場にわが子と座るしかない。無数の悲痛な声を可視化したかった」と答えていて、赤ちゃんを連れて出席を試みること自体にアピールの意味があったことを認めています。これだけ話題になっていますし、パフォーマンスとしては成功したと言っていいでしょう。

株を下げた熊本市議会

 しかし、私個人の意見としては、議論にはなったものの、否定的な意見もかなりの割合を占める結果となってしまったことから、事前の根回しや仲間集めをもう少ししっかりしておけば良かったのではないかと思えます。

 また、女性議員は新聞の取材に対し、「母子分離が子供の発達に影響する」ということを話しています。その記事だけを読むと、子供を預けて働いている人が、心にわだかまりを抱くでしょう。子供を預けることが葛藤を生むデリケートな問題だということを、認識してほしかったと思います。 

 もっと残念なのは、女性議員を処分することにした熊本市議会の対応です。この機会に規則を変え、市民の子育て支援を充実させる議論をすれば株が上がったのに、 杓子(しゃくし) 定規な対応に終始していました。願わくは、今回と同じパフォーマンスを、より高い完成度で、もう一度どこかの女性議員にやっていただきたい。そして、それが母子の当たり前の姿になっていくといいなと思います。(宋美玄 産婦人科医)

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宋 美玄(そん・みひょん)

産婦人科医、医学博士。

1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。詳しくはこちら

このブログが本になりました。「内診台から覗いた高齢出産の真実」(中央公論新社、税別740円)。

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8件 のコメント

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見えないもののマネジメントと評価

寺田次郎 六甲学院放射線科不名誉享受

求人の募集要項にマネジメント経験があるわけですが、これに子育てやスポーツでの経験が入れられるとだいぶ見え方も変わるでしょう。 あまり一般的ではあ...

求人の募集要項にマネジメント経験があるわけですが、これに子育てやスポーツでの経験が入れられるとだいぶ見え方も変わるでしょう。
あまり一般的ではありませんが、サッカーの名手は時に敵味方22人の時間と空間と頭の中を支配します。
目の前の相手だけでなく、遠く離れた相手の動きも見ながら、展開を読み、展開を作ります。
評価は評価者の理解と感情と政治に左右されますが、ボールを10㎝動かすだけで、全体像は変わるものです。
この手の僕の発言は上から目線に取られることもありますが、俯瞰する癖がつくと、そう受け取られるのも仕方ないですね。

リーダーシップ教育が一昔前から言われていますが、ほとんどの人にはフォロワーシップの方が大事ですし、そもそも両者が表裏一体であることはあまり認識されていません。
リーダーシップが孤軍奮闘や叱咤激励およびトップダウンのイメージが強く、コーチングによって誘導する類のものもあることが認知されていない為です。

大きな子供を沢山育てるのが会社の一つのシステムですから、それは子育てと相似でしょう。
医局時代を思い出されれば笑えて来るかもしれないですね。
若手女性の実績のヘルプやショーアップもよろしいのかもしれませんが、男性的な女性の賛美や競争よりもチーム全体として結果を出すための協調も同じく評価されるべきです。

サッカーのディフェンシブハーフはボランチ(かじ取り)と言われることも多いです。
そのポジションの選手によく言われる言葉が「例え一度もボールに触れなくてもチームが勝てばいい仕事。」
競技を知らない人には夢遊病患者にさえ見えますが、良いボランチは味方のチャンスとリスクを評価しながら、数字が具現化する前の事象を捉えて動いています。

こういう事件をきっかけに、家事や育児とキャリアの関係性の価値を再定義するのが重要ではないかと思います。

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PTAならどうなのか

にんじん

最初にこのニュースを聞いた時はとんでもないと思いました。 しかし、議会ではほとんどの議員は座って聞いているだけです。 赤ちゃんが泣いたり、議員が...

最初にこのニュースを聞いた時はとんでもないと思いました。
しかし、議会ではほとんどの議員は座って聞いているだけです。
赤ちゃんが泣いたり、議員が議事に集中できないならともかく、赤ちゃんと一緒に聞くだけなら十分可能だと思いました。
居眠りしたり、スマホを弄っている議員もいますよね。
そんなのよりよほどマシです。
こどもがいると、汚いヤジも飛ばせないのではないでしょうか。
登壇して発言する際は、誰かに預かってもらったらと思うけど、赤ちゃん同伴で議会に出席するのは、それほど悪い事ではないと思いました。
重要なのはこの議員が職務をはたしているかどうかです。

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こういう時に思うのが、

天気予報は晴れ

皆自身の体験や環境のみを持ち出して、限定的な感想を持ちがちということです。 よく「昔は〜」という人がいますが、結局は自身の経験を肯定したいがため...

皆自身の体験や環境のみを持ち出して、限定的な感想を持ちがちということです。
よく「昔は〜」という人がいますが、結局は自身の経験を肯定したいがための自己満足に終わってるアドバイス(のつもりの嫌味、か自慢)が多いです。
自分はうまくやってきたと思うなら、それが出来た環境に感謝してればいい話です。

今回の件については、先生のおっしゃる通り、根回しがあればもう少し発展性のあるものになっていたのではないかと残念に思います。
こどもを楯にしているようにも映り、直視できない辛さを感じました。
こどもには母親だけではなく、父親もいるはずです。
父親はどう思っているのだろう?
保活で奮闘しているのも母親ばかりです。
父親が親となってない世代の議員の人達の中だからこそ、あのようなパフォーマンスしかなかったのかな、と思い、胸が痛くなりました。

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