文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

いのちは輝く~障害・病気と生きる子どもたち

コラム

脳に重い先天奇形がある男の子 神様と共に生きる

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 全前脳胞症という脳の重い先天奇形について、知っている人はほとんどいないでしょう。人間の脳のうち、前脳という部分が胎児期に二つに分かれることで左右の大脳半球が形作られます。左右に分かれるのが途中で停止すると、脳の働きも止まってしまいます。そして、場合によっては顔も左右に分かれないために、鼻は額から垂れ下がり( 象鼻ぞうばな )、目の位置は低く一つだけのことがあります(単眼症)。長く生きることは大変難しいと医学書には書かれています。

「人の手によって命の期限は決めない!」

 妊娠4か月のとき、赤ちゃんに全前脳胞症と象鼻、複雑な心奇形があることが胎児超音波検査で分かりました。医師からは人工妊娠中絶を勧められました。死産になる可能性が高いし、生まれても長くは生きられないという判断からでした。その医師の 眼差まなざ しは冷たく、まるで赤ちゃんには生きる価値がないと言っているようでした。

【名畑文巨のまなざし】  女の子はダウン症です。聴覚障害もあり、手話でコミュニケーションをとっています。天性の明るさがあって、小学校では、いつも周りに子どもたちが集まってくるのだとか。手話を知りたいと思ったり、いたわってあげたいという優しさが芽生えたり。ハンデのある子を離れて見るのではなく、自然と関わりたいという気持ちが湧いてきて、優しい空気が教室に広がっているのだそうです。京都府にて。

【名畑文巨のまなざし】
 女の子はダウン症です。聴覚障害もあり、手話でコミュニケーションをとっています。天性の明るさがあって、小学校では、いつも周りに子どもたちが集まってくるのだとか。手話を知りたいと思ったり、いたわってあげたいという優しさが芽生えたり。ハンデのある子を離れて見るのではなく、自然と関わりたいという気持ちが湧いてきて、優しい空気が教室に広がっているのだそうです。京都府にて。

 夫婦はクリスチャンでした。母親は、「人の手によって命の期限を決めることはありません」とはっきりと医師に伝えました。

 医師の予想を裏切り、赤ちゃんは母胎の中で生き続け、39週で生まれて来ました。 分娩ぶんべん に立ち会った小児科医は、赤ちゃんが呼吸をしていないのを見ると、すぐに気管内挿管をして肺に酸素を送り込みました。赤ちゃんの両目は顔の中央に寄っており、小さく、全盲の状態でした。鼻は普通の赤ちゃんより長く垂れていました。難治性のてんかんも合併していました。検査の結果、先天性染色体異常も見つかりました。

気管切開、胃ろうを施し自宅で療養 2歳に

 赤ちゃんには たすく 君という名前が付けられました。気管が異常に軟らかく 内腔ないくう がつぶれてしまうために十分な呼吸ができず、生後2か月で気管切開の手術を受けました。新生児集中治療室(NICU)で4か月間を過ごし、生後8か月で自宅に帰りました。

 現在2歳になりますが、首がやや わっているだけで、四肢の動きはあまりありません。2歳になる少し前には、管を通して直接胃に栄養を入れる「 胃瘻いろう 」をつくる手術を受けています。

1 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

inochihakagayaku200

いのちは輝く~障害・病気と生きる子どもたち

 生まれてくる子どもに重い障害があるとわかったとき、家族はどう向き合えばいいのか。大人たちの選択が、子どもの生きる力を支えてくれないことも、現実にはある。命の尊厳に対し、他者が線を引くことは許されるのだろうか? 小児医療の現場でその答えを探し続ける医師と、障害のある子どもたちに寄り添ってきた写真家が、小さな命の重さと輝きを伝えます。

matsunaga_face-120

松永正訓(まつなが・ただし)

1961年、東京都生まれ。87年、千葉大学医学部を卒業、小児外科医になる。99年に千葉大小児外科講師に就き、日本小児肝がんスタディーグループのスタディーコーディネーターも務めた。国際小児がん学会のBest Poster Prizeなど受賞歴多数。2006年より、「 松永クリニック小児科・小児外科 」院長。

『運命の子 トリソミー  短命という定めの男の子を授かった家族の物語』にて13年、第20回小学館ノンフィクション大賞を受賞。著書に『小児がん外科医 君たちが教えてくれたこと』(中公文庫)、『呼吸器の子』(現代書館)など。2017年11月、『子どもの病気 常識のウソ』(中公新書ラクレ)を出版。

ブログは http://wallaby-clinic.asablo.jp/blog/

名畑文巨(なばた・ふみお)

1958年、大阪府生まれ。外資系子どもポートレートスタジオなどで、長年にわたり子ども撮影に携わる。その後、作家活動に入り、2009年、金魚すくいと子どもをテーマにした作品「バトル・オブ・ナツヤスミ」でAPAアワード文部科学大臣賞受賞。近年は障害のある子どもの撮影を手がける。世界の障害児を取材する「 世界の障害のある子どもたちの写真展 」プロジェクトを開始し、18年5月にロンドンにて写真展を開催する計画。大阪府池田市在住。

ホームページは http://www.fumionabata.com/index.html

いのちは輝く~障害・病気と生きる子どもたちの一覧を見る

3件 のコメント

コメントを書く

社会の評価と神の評価 元気の出る宗教学

寺田次郎 六甲学院放射線科不名誉享受

神様と一緒に生きているというのはどういう状況でしょうか? 神学などの宗教学は哲学と同じく虚学であり、医学や工学などの実学から遠い所にあります。 ...

神様と一緒に生きているというのはどういう状況でしょうか?
神学などの宗教学は哲学と同じく虚学であり、医学や工学などの実学から遠い所にあります。
しかし、様々な事象や物語を通して現実や科学と繋がっています。
また、世俗の常識と別のルールの社会や理論、物語を持つことでもあります。

我々は日々慣習や常識に従い生きています。
一部例外を除き、数学的に標準偏差から2SDの範囲が正しい事になっている社会です。
表のルールや不文律、感覚から離れた者を無視したり、時に迫害しがちです。
区別と差別の違いもよくわからない人間の自己防衛反応であり、集団形成上見えやすい分かりやすい物事を中心に据える方が容易だからです。
医学のエビデンス主義もそういう部分はありますが、最近のニュースでどれだけの偏見と政治が真実を歪めているかよくわかります。

だから、常識の枠から外れた者が必ず肉体的な死亡や精神的死亡、社会的死亡を甘受する必要はありません。
プロレスで言う所のリングの条件と場外乱闘を知ればいいというだけです。

本文は先天的奇形の子供を持った両親の物語ですが、世の中には両親や会社や学校に見捨てられた人、若くして癌に見舞われた人、その他とてつもない理不尽を貰った人もいるでしょう。
しかし、ある命や努力が無駄かどうか、可視化された結果がその時点で結果論として無駄に見えても、長期的に本当に無駄かどうか判断できる人間などおらず、それは神や悪魔の領域です。
そして、自傷他害の恐れのない限り、主観的な評価を心に刻むのは、信教の自由と同じ自由です。

本文は北方領土問題と戦った外交官宗教家とスポーツ政治家の話がヒントになっています。
宗教や歴史の中には、困難と立ち向かう技術や精神のヒントがあります。
医学部のカリキュラムもガチガチですが、英語より、医学より、他人や社会の元気や優しさを引き出す応用力も大事です。

つづきを読む

違反報告

異常と奇形の人為的基準 葛藤の意味

寺田次郎 六甲学院放射線科不名誉享受

もしも、スタッフや義父が肯定の言葉を投げかけていたら、父母の受け止め方はどうだったでしょうか? キリスト教の中に受難からの復活というシナリオがあ...

もしも、スタッフや義父が肯定の言葉を投げかけていたら、父母の受け止め方はどうだったでしょうか?
キリスト教の中に受難からの復活というシナリオがあることを理解しておかないといけません。
また、父母が諦めたとき、子供の味方に回る人間が居なくなるということは良心の呵責をもたらすでしょう。
もしも、葛藤がなく、前向きな言葉が出ていたのであれば、それはむしろ危険なように思います。
(きっと、表に出さないまでも、葛藤の中で、最善の答えを考えられたのだと思います。)

他の宗教でも手術や輸血に関する考え方で独特なものがあります。
自己血輸血さえダメな場合もあるらしいですが、遺伝子修飾やiPS細胞に関する生命倫理も色々と検討されるでしょう。
そもそも、中絶のガイドラインや法律だって、所詮は人間が決めたものです。

「自分の子を殺したい親はいないと思います。」
そうでしょうか?
歴史の本には子殺し、親殺し、タブーとされる事件が山ほど出てきます。

また、優性保護法案による強制中絶のニュースが出ています。
そもそも、担当した医師の能力の問題や政治問題もあるので、色んな意味で考えさせられる事件です。
病理の授業では9割の人間は何らかの奇形を持つと習いましたが、ある個性を否定する時の恣意性の恐怖は、ホロコーストや治安維持法にも繋がる危険な発想であり、本文のような問題を他人事と思わない、考える機会が大事と思います。
障害児は国の荷物だと老人が口にすれば、5年後に同じことを言われうることはよく理解すべきです。

つづきを読む

違反報告

God bless you

エンジェル

この連載には毎回泣いてしまいます。 「賛」君の名前の由来は「賛美」から来るのでしょうか?ご両親の信仰の深さを感じます。 キリスト教は中絶や自死を...

この連載には毎回泣いてしまいます。
「賛」君の名前の由来は「賛美」から来るのでしょうか?ご両親の信仰の深さを感じます。

キリスト教は中絶や自死を禁じています。私はそれには中立の立場です。人は弱く、自信がなく、宣言し忠告をされなければ、時に流されてしまうからでしょう。

賛君、ご両親、支える人の疲れや重荷を神様が背負い、休ませて下さるように心から祈ります。皆さんはいつだって一人ではありません。

つづきを読む

違反報告

すべてのコメントを読む

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、ヨミウリ・オンライン(YOL)、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事