いのちは輝く~障害・病気と生きる子どもたち 松永正訓
医療・健康・介護のコラム
脳に重い先天奇形がある男の子 神様と共に生きる
全前脳胞症という脳の重い先天奇形について、知っている人はほとんどいないでしょう。人間の脳のうち、前脳という部分が胎児期に二つに分かれることで左右の大脳半球が形作られます。左右に分かれるのが途中で停止すると、脳の働きも止まってしまいます。そして、場合によっては顔も左右に分かれないために、鼻は額から垂れ下がり( 象鼻 )、目の位置は低く一つだけのことがあります(単眼症)。長く生きることは大変難しいと医学書には書かれています。
「人の手によって命の期限は決めない!」
妊娠4か月のとき、赤ちゃんに全前脳胞症と象鼻、複雑な心奇形があることが胎児超音波検査で分かりました。医師からは人工妊娠中絶を勧められました。死産になる可能性が高いし、生まれても長くは生きられないという判断からでした。その医師の 眼差 しは冷たく、まるで赤ちゃんには生きる価値がないと言っているようでした。
夫婦はクリスチャンでした。母親は、「人の手によって命の期限を決めることはありません」とはっきりと医師に伝えました。
医師の予想を裏切り、赤ちゃんは母胎の中で生き続け、39週で生まれて来ました。 分娩 に立ち会った小児科医は、赤ちゃんが呼吸をしていないのを見ると、すぐに気管内挿管をして肺に酸素を送り込みました。赤ちゃんの両目は顔の中央に寄っており、小さく、全盲の状態でした。鼻は普通の赤ちゃんより長く垂れていました。難治性のてんかんも合併していました。検査の結果、先天性染色体異常も見つかりました。
気管切開、胃ろうを施し自宅で療養 2歳に
赤ちゃんには 賛 君という名前が付けられました。気管が異常に軟らかく 内腔 がつぶれてしまうために十分な呼吸ができず、生後2か月で気管切開の手術を受けました。新生児集中治療室(NICU)で4か月間を過ごし、生後8か月で自宅に帰りました。
現在2歳になりますが、首がやや 据 わっているだけで、四肢の動きはあまりありません。2歳になる少し前には、管を通して直接胃に栄養を入れる「 胃瘻 」をつくる手術を受けています。
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この子は産まれてきて生きてはいるが生きてはいません。
この子は親の為だけに産まれてただ存在しているのでしょう。
生かされているのは親のほう。
この子が幸せかどうかは...誰にもわからない。
親が自分でそういう選択をしたのならそれで良いです。
他人がどうこういうことではない。
ただ私ならば....とは思ってしまう。
これは子供にとっては苦しみではないのかと....。
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医療や福祉に生かされること自体を自然じゃないと考える人が多いみたいだけど、そうだろうか。世の中に強い人と弱い人の両方が存在するのは、強い人が弱い人を助けるためだと思うのだけど。自分の目や耳や手や足は、体が不自由な人の代わりになるために神様が付けてくれたものだと、子供の頃から聞いて育った。
自分が弱い時は強い人の世話になるし、強い時は弱い人を助けたい。
失業した時は雇用保険のおかげで命をつないだし、今は裕福になったから、いろんなところに寄付もするし税金もいっぱい払う。人はいつでもそのどちらかを行ったり来たりで、表裏一体の存在で、助けられることも助けることも、人間としてごく自然なことなんじゃないのかな。
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