文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

医療・健康・介護のコラム

眼鏡をかけても年々見えなくなる…病的近視の進行は「長生きの勲章」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック
眼鏡をかけても年々見えなくなる…病的近視の進行は「長生きの勲章」

 皆さんは、近視と強度近視、病的近視の違いを知っていますか?

 遺伝や生活環境などによって、小学校高学年くらいから始まる通常の近視(単純近視)では、近視の度が進むことはまずありません。しかし、強度近視は、20歳以降になっても眼球の前後の長さ(眼軸長)が拡大し、近視が進むのが特徴です。「病的近視」は、その中でも、網膜や視神経にダメージが加わるなど、単に近視の度合いが大きくなるだけでなく、眼球にさまざまな病変が積み重なっていくものをいいます。日本人に多くみられます。

 病的近視は、年齢を重ねるにつれ視野や視力の障害が起こり、進行します。

 眼鏡をかけたり、コンタクトレンズをつけたりすれば、見え方が著しく悪くなることは、以前は少なかったと思います。しかし、最近では「年々見えなくなる、何とかならないものか」と受診する方がとても増えています。

  何故なぜなのでしょう。

蓄積される歪み、ダメージ…60歳前後あたりの「急変」

 私の答えは、高齢化社会になっているから、です。

 子どものころから眼鏡を使用してきた人は、十分に視力が出ない、一部の、非常に重度の病的近視の人を除くと、強度近視であっても60歳くらいまでは眼鏡やコンタクトレンズなどで矯正して、何とか社会生活を送ることができました。

 しかし、病的近視になると、60歳前後あたりから、網膜の萎縮、視神経へのダメージ、緑内障の合併などの影響で、視力と視野の異常が目立ってきて、メガネやコンタクトレンズを使っていても、不自由さを訴えるようになるのです。さらに、強度近視に伴って斜視が起こる「 眼窩がんか窮屈病」( 満員電車と似た状態…強度近視が「眼窩窮屈病」に )や、網膜黄斑部が変形したり、穴が開いたりするなどの合併症が出ることもあります。

 「近視」といえば、角膜や水晶体の屈折の度合いの問題であり、「眼鏡などでうまく矯正さえできれば、ちゃんと見えるはず」と思いがちです。ところが、強度近視、病的近視ではその限りではなく、眼球のいろいろなところにゆがみや、病変が加わってくるのです。

 そういう病変がゆっくり進行し、蓄積されて、ある年齢になると、見え方に不都合が生じていることを急に自覚する場合があるのです。

1 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。日本神経眼科学会理事長、東京大学医学部非常勤講師、北里大学医学部客員教授などを歴任。15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人 心療眼科医が本音で伝える患者学」、「絶望からはじまる患者力」(以上春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社)、医療小説「茅花流しの診療所」、「蓮花谷話譚」(以上青志社)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半は講演・著作活動のほか、NPO法人、患者会などでのボランティア活動に取り組む。

心療眼科医・若倉雅登のひとりごとの一覧を見る

<PR情報>

最新記事