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医療・健康・介護のコラム

保健師、栄養士ら590人が軽井沢で“減塩合宿” 

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保健師、栄養士ら590人が軽井沢で“減塩合宿” 

昼食で出された減塩のいなり寿司やみそ汁を味わう保健師や管理栄養士ら(長野県軽井沢町の軽井沢プリンスホテルで)

 高血圧の予防に全国の保健師や管理栄養士らが立ち上がった――。日本人の3人に1人、約4300万人が 罹患りかん しているとされる高血圧。その対策は、日本人の健康寿命の延伸の大きな課題になっている。そんな中、地域の草の根から住民の病気予防や食生活の改善に取り組む保健師や管理栄養士らが長野県軽井沢町のホテルに缶詰め合宿し、減塩食品の可能性を探る勉強会が開催された。ホテル側の協力を得て、朝・昼・夕の3食すべてが減塩メニューという徹底ぶりで、「減塩」を突破口にそれぞれの地域で健康社会を定着させようという、その熱意に圧倒された。(ヨミドクター・山根章義)

“サイレントキラー”招く食塩摂取量

 勉強会は11月11、12日、長野県軽井沢町の軽井沢プリンスホテルで開催され、全国の保健師や管理栄養士らでつくる「保健活動を考える自主的研究会」(熊谷勝子代表)のメンバーのうち、約590人が参加した。会場は、2016年のG7伊勢志摩サミットで交通大臣会合が開かれた場所だ。

 高血圧はそのまま放置すると、脳卒中や虚血性心疾患、腎不全、大動脈 りゅう など心血管病を引き起こす。自覚症状がないことから、「サイレントキラー」(沈黙の殺人者)とも呼ばれ、日々の食塩摂取量と関係があると言われる。

 厚生労働省が2017年9月に発表した「平成28年 国民健康・栄養調査結果の概要」によると、日本人の1日あたりの食塩摂取量は、男性が10.8グラム、女性が9.2グラム。1975年の調査の日本人平均13.5グラムに比べれば減ってはいるものの、日本高血圧学会は6グラムを推奨しており、「世界的に見ると高いレベルにある」(日本高血圧学会減塩委員会)とされる。

ホテル総料理長が減塩メニュー考案

 今回の勉強会が「減塩」をテーマにしたのは、こうした背景からで、その“生きた教材”とも言える減塩メニューは、減塩食品を販売する食品メーカー17社が商品を提供し、同ホテルの北爪雅信総料理長がメニューを考案した。

 昼食は、酢飯に減塩のすし酢を生かした、いなりずしやかっぱ巻き、それに減塩みそ汁と野菜スティックが供された。野菜スティックにつけるソースには、減塩だし入りみそが使われた。

 夕食は、減塩した焼き肉のたれを利用したローストビーフや、減塩だしで味付けした茶わん蒸し、食塩を使わない高菜チャーハンなど和洋中のコース料理仕立てで、夜の懇親会のおつまみも「減塩」にこだわる徹底ぶり。

北爪総料理長が考えた減塩のコース料理。左上から時計回りに、サーモンと明太子のタラモサラダ、茶わん蒸し、エビと野菜の塩味炒め、焼きちくわ入りうどん、高菜チャーハン、ローストビーフ

北爪総料理長が考えた減塩のコース料理。左上から時計回りに、サーモンと明太子のタラモサラダ、茶わん蒸し、エビと野菜の塩味炒め、焼きちくわ入りうどん、高菜チャーハン、ローストビーフ

 バイキング形式の朝食は、ロールパン、ハム、ベーコン、ふりかけ、ケチャップなどの食料や調味料が“減塩仕様”で並んだ。

減塩食品が使われた朝食バイキング

減塩食品が使われた朝食バイキング

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北爪総料理長

 食品メーカーが試行錯誤の末に開発した減塩商品に、一流ホテルの調理技法を凝らした北爪総料理長は、「減塩食品そのものがおいしく仕上がっているので、なるべく手を加えずに、素材を生かすことに注力した。軽井沢は『屋根のない病院』とも言われる。ホテルとしても健康に良く、おいしいメニューを提供することは意義がある」と述べた。

草の根からの高血圧予防へパワー結集

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会場内に設けられた食品メーカーのブースには多くの参加者が集まり、熱心に質問していた

 ともすれば減塩メニューには「味が薄く、おいしくない」というイメージもあるが、参加者からは「どのメニューも『減塩』と言わなければわからないレベル」といった声があちらこちらで聞かれた。

 富山県入善町の保健師、梅津初子さんは「普通のいなりずしの味と変わらないのに、食塩相当量が半分以下というのには驚いた。地域に戻って、減塩の食品や調味料を活用して多くの人に食べてもらう取り組みを行いたい」と語っていた。

 国民健康保険(国保)の財政を改善するため、国は2016年度から特定健診の受診率などの成績に応じて、保険者(運営主体)である自治体に支援金を交付する「保険者努力支援制度」を実施しており、18年度はさらに規模を拡大して実施する。病気予防や健康づくりに役立つ情報のほか、健康グッズなどの提供も、評価点になることから、「保健活動を考える自主的研究会」の熊谷代表は、「高血圧、糖尿病ともに塩分がリスクになるため、食事を減塩することはとても重要。地元の商工会や食品業者らと連携しながら、減塩食品の活用を進めていく必要がある。各地域で行われる保健指導や重症化予防の学習会で、住民に減塩食品を体験してもらうなどしていきたい」と話し、制度を利用しながら「減塩」を地域で根付かせる重要性を語っていた。

 会場には、食品メーカーの減塩食品も展示され、参加者は担当者に開発の苦労話や販路などを熱心に質問していた。

【取材後記】

 今回の勉強会の取材で、初日の昼食、夕食、2日目の朝食とも食べた。参加者のコメントにもあるように、減塩料理とは思えないほどの味だった。夕食に出たコース料理の高菜チャーハンは、塩味が利いていて、おかわりしたいぐらいだった。糖尿病予備軍で、会社の産業医には定期的に通っている。血圧を下げる薬とのつきあいも数年以上。体重を減らすため、カロリーは気にしてはいるが、食塩相当量まで意識するのは難しいと感じていた。仕事で忙しいとどうしても、外食したり、買ってきたものをそのまま食べたりしてしまうが、減塩食品が普及し、店頭にふつうに並べば、それほど苦労せず減塩の食事をとれそうだ。ただし、おいしいからといって、食べ過ぎるのは要注意。(山根)

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ヨミドクターの編集担当者が、小耳にはさんだ健康や医療の情報をご紹介。お勧めのコラムに込めた思いなどもつづります。

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