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歩いた分だけ寄付金…「健康づくり」と「社会貢献」同時に

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歩いた分だけ寄付金…「健康づくり」と「社会貢献」同時に

 埼玉県在住で東京・丸の内に通勤する会社員小海信哉さん(45)の1日の平均歩数は1万785歩。歩いた分だけ、地震で被災した熊本への寄付につながるプロジェクトに参加中だ。近年、個人に運動を促すインセンティブ(ごほうび)事業が着目され、国も制度面で後押しする。(竹井陽平)

企業が協賛金

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 大企業などの健康保険組合でつくる健康保険組合連合会は現役世代の健康意識を高め、運動習慣を根付かせる方法を考えてきたが、国民の約7割とされる「健康無関心層」対策が課題だった。そこで「社会貢献」というごほうびの効果を試すことになった。

 プロジェクトの実施期間は今年9月~来年1月。東京駅周辺で働く人たちの健康増進を目的に三菱地所や野村総合研究所などでつくった「クルソグ実行委員会事務局」と、データヘルス事業会社「法研」が運営し、約50組合、約5600人が参加している。

 小海さんは軽い気持ちで参加したが、すぐにのめり込んだ。スマートフォンに1日平均の歩数や順位が表示される仕組みで、負けん気を刺激された。

 毎日、自宅と最寄り駅を歩いて往復し、帰宅後は中学3年生の長男(15)と1時間の散歩。2か月で体重は2キロ減り、さらにやる気に火がついた。「自分の健康だけでなく復興の役に立つなんて」と笑顔を見せる。

 熊本県への寄付金は賛同企業の協賛金などを原資とし、歩数に応じて増える。参加者の歩数の合計は既に5億9000万歩を超えており、このペースでいけば200万~250万円が県に贈られる見通しだ。

医療費の抑制

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 こうした事業の先駆けが、国と全国6市などが2014~17年に行った実証実験「健幸ポイントプロジェクト」だ。「歩数の増加」「健康診断の受診」――など達成度に応じてポイントを与え、それを商品券などに交換できる仕組みで約1万2600人が参加した。

 その結果、医療費の抑制効果が確認された。6市の70~74歳の医療費の2年間の伸びを、参加者と非参加者で比較すると9万4000円抑えられた。

 参加者が地元のスポーツ用品店で商品券を使うなど地域経済活性化の効果もある。医療費抑制効果を足して、事業費を差し引くと、6市合計で年平均4億7000万円の黒字だった。

 今後、このノウハウを元に民間企業が全国に事業展開する予定で、20年度に参加者100万人を目指す。

 プロジェクトリーダーを務めた筑波大学教授の久野譜也さん(健康政策)は「インセンティブの設定に加え、参加者が3週間ほどで努力の成果を感じられる仕組みが重要」と指摘する。

 国も後押しを始めた。健保組合や共済組合は、75歳以上の医療費を支えるため「後期高齢者支援金」の負担が義務だが、20年度から、組合員の健康維持への努力が足りないとみなされれば最大で1割支援金が増え、努力が認められれば逆に減らすことになった。

 そして減算を評価する項目として「喫煙対策」などと並び、「個人向けのインセンティブ事業」が盛り込まれた。国の担当者は「健保組合のがんばり具合によってメリハリをつけ、結果的に国民の健康増進につなげたい」としている。

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