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介護・シニア

認知症の人の外出支援

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交通機関が取り組み 行政などと連携必要

 

認知症の人の外出支援

昨年12月、バス会社と共同で京都市内で行われた認知症の人の外出をサポートする訓練の様子(岩倉地域包括支援センター提供)

 認知症になってもお出かけを楽しみたい――。そんな願いをかなえるため、公共交通機関を巻き込んで、外出をサポートする取り組みが注目されている。ただ、多くの交通機関は、事故などを恐れて外出支援に及び腰。警察と連携を図るなど環境整備が必要だ。

 「認知症の人と家族を対象に、実際に交通機関を使ってもらって、意見を聞いてみてはどうか?」

 10月31日、京都市左京区内の七つの地域包括支援センターが共催した「認知症になっても外出をあきらめないワークショップ」。同区では2012年から交通機関の駅員や運転手、地域住民らが参加する訓練を行っており、この日は訓練に参加してきた市内の鉄道やバス、タクシー会社の社員らが、認知症対応について悩みやアイデアを共有した。

 認知症の人の外出というと、 徘徊はいかい をイメージする人も少なくない。訓練を主導してきた同区の岩倉地域包括支援センターも当初は、行方不明をなくすため、認知症の人を保護し、外出を止めることばかり考えていたという。

 しかし、特に軽度の場合、周囲の手助けがあれば外出を続けられる人も多い。こうした認識が不足しているため、一部事業者が「降りる駅が一瞬、分からなくなった」といったちょっとしたことで警察に通報。その後、家族に止められて、外出の機会が減り、認知症が進んでしまうこともある。

 そこで昨年からは、行方不明の防止だけでなく、外出支援の視点も取り入れた訓練を行っている。

 例えば、鉄道会社で行った訓練では、認知症役の男性が「私は若年性認知症です」などと書かれたカードを携帯。困った様子の男性に車内の住民が声を掛けて運転士に連絡し、応援要請を受けて乗車した社員が付き添って娘役の女性に導く、といった具合だ。

 訓練に参加した交通機関からは、「落ち着いて話を聞くうちに、帰る方法を思い出してくれることもあり、勉強になる」などと好評だ。同支援センターの松本恵生センター長は「周囲がサポートし、認知症になっても安心して出かけられる地域を目指したい」と話す。

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  ■学ぶ機会少ない

 ただ、こうした交通機関はまだ一部だ。

 交通機関のバリアフリー化に取り組む公益財団法人「交通エコロジー・モビリティ(エコモ)財団」が昨年、全国の交通機関に行った調査では、8割が認知症とみられる乗客に遭遇しているが、認知症への対応を学ぶ機会を設けていない事業者が7割以上に上った。

 厚生労働省の14年度の委託調査では、回答した認知症の当事者約300人のうち、もっと認知症の知識を持ってほしい人として、6割が「駅の係員やバスの運転手」を挙げ、「バス停や駅など目的地に着いたら知らせてくれるサービス」も6割が望んでいた。

 京都大の三浦研教授(居住福祉計画)は、「交通機関は、事故が起きたり、行方不明になったりすることを恐れ、認知症の人の外出支援には消極的になりがち。交通機関だけで解決するのは難しく、行政や警察と連携体制を作っていく必要がある」としている。

支援必要な人にカード配布

 

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公共交通機関の利用に手助けが必要な人が携帯できるように作られた「お出かけサポートカード」

 交通機関の利用に手助けが必要な人向けの支援を巡っては、「お出かけサポートカード」と呼ばれる手段も注目されている。

 交通エコモ財団が認知症当事者や介護関係者、有識者らの意見を聞いて作成し、今秋から配布を始めた。「○○⇔○○に行きます。近くになりましたら教えてください」「○○(電話)○○(名称)に連絡してください」など9種類があり、定期入れに入る大きさだ。無料でインターネットから印刷でき、書き込んで使う。

 認知症に限らず、高齢者や障害者ら支援を望む人が広く使える。モデルにしたイギリスでは、バスや鉄道などでこうしたカードを配布しているという。

 同財団バリアフリー推進部の松原淳課長は「認知症の人やボランティアが集まる会合や交通機関、介護関係者などを通じて広めていきたい」と話している。

  http://www.ecomo.or.jp/barrierfree/ninchi/data/card_2017.pdf から印刷できる。問い合わせは、同財団(03・3221・6673)へ。

 (田中ひろみ)

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