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僕、認知症です~丹野智文43歳のノート

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「認知症の人を勇気づけたい」湧き上がる思い

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意外な一面に親近感

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認知症の人や家族、医療・介護関係者が集まる「れもんカフェ」(京都府宇治市)でも講演しました

 後日、山崎先生から「森先生に会いに行こう」と誘われて、妻を連れて、2泊3日で京都に出かけました。2014年の夏真っ盛りの頃のことです。

 山崎先生の診療所のスタッフや「考える会」のメンバーなど、十数人が参加する団体旅行です。山崎先生お勧めの駅弁を買って新幹線に乗り込み、車内で広げて舌鼓を打ちました。

 山崎先生は、京都のお店の情報もあらかじめネットで調べていたそうで、我々も行く先々でおいしいものにありつけました。この頃までには、山崎先生が認知症を巡る様々な課題に熱心に取り組んできたことが私にも分かり、「素晴らしい先生」という思いが芽生えていたのですが、「食べることが大好き」という意外な一面に触れて、ますます先生のことが好きになりました。

診断後の不安に年齢差はない

 翌日、認知症がテーマの講演会に参加して、私も話をしました。京都の認知症当事者と家族による講演もありました。私よりずっと年上の人たちでしたが、診断直後の不安などは、誰しも同じなのだと感じました。

 それまで、講演の依頼を受ければ、「頼まれたから」と引き受けてきたものの、「30代で発症した自分の体験が、果たして参考になるのか」ということが気にかかっていました。しかし、京都で他の当事者の思いを聞いて、「不安な気持ちは、年齢に関係ない」と分かり、自分が話すことにも意味があるのでは、という気持ちが強くなりました。

「悪いことしていない」家族も応援

 人前で語ることについて、気になっていたことがもう一つありました。私が認知症だと地元で知られるようになると、家族に何か影響があるのでは、ということです。

 妻は、講演の時には一緒に来てくれていたので、状況は理解しています。心配なのは、私の両親と思春期を迎えた2人の娘たちのことでした。

 宮城県内の実家に行ったときに、取材や講演の依頼を受けていることを父と母に話して相談しました。すると普段は無口な父が、「何も悪いことをしているわけではないんだから、いいんじゃないか。私たちのことは気にしないで、自分がいいと思う通りにすればいい」と言ってくれたのです。

 娘たちには、妻が不在の日に3人で外食した際に、気持ちを聞いてみることにしました。

 「パパは、病気のことをオープンにして、講演を頼まれたら引き受けたいと思っている」と話しました。「それで友達にパパが認知症だと知られるかもしれない」という私の言葉に、下の娘は最初、「うーん」と迷っている感じでした。でも上の娘が、「パパはいいことをしてるんだから、いいんじゃない」と言うと、下の娘も「そうだね」と同意したのです。

 2歳違いと年が近いせいか、普段はけんかをすることもある姉妹です。でもこの時は、はっきりと自分の意見を述べた姉に、妹がついていった感じでした。

 私のせいで、両親が誰かに心ない言葉を投げつけられたり、娘たちが学校でいじめられたりすることがあれば、その時点で講演活動はやめていたと思います。しかし、そんなことはこれまで一度も起きていません。

 山崎先生や森先生との出会い、京都への講演旅行――。「まずはやってみる」という気持ちで取り組んだら、新しい発見やさらなる出会いがありました。そして、「自分の経験を生かして、不安の中にいる認知症の人たちを勇気づけたい」という思いが、私の中で強くなっていったのです。(丹野智文・おれんじドア実行委員会代表)

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丹野智文(たんの・ともふみ)

 おれんじドア実行委員会代表

 1974年、宮城県生まれ。東北学院大学(仙台市)を卒業後、県内のトヨタ系列の自動車販売会社に就職。トップセールスマンとして活躍していた2013年、39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断を受ける。同年、「認知症の人と家族の会宮城県支部」の「若年認知症のつどい『翼』」に参加。14年には、全国の認知症の仲間とともに、国内初の当事者団体「日本認知症ワーキンググループ」(現・一般社団法人「日本認知症本人ワーキンググループ」)を設立した。15年から、認知症の人が、不安を持つ当事者の相談を受ける「おれんじドア」を仙台市内で毎月、開いている。著書に、「丹野智文 笑顔で生きる -認知症とともに-」(文芸春秋)。

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