僕、認知症です~丹野智文43歳のノート
医療・健康・介護のコラム
「認知症の人を勇気づけたい」湧き上がる思い
素っ気ない初対面「まずはつきあってみよう」
宮城県庁での初めての講演会から数か月がたった頃、仙台市内で「いずみの杜診療所」などを開いている山崎英樹先生に頼まれて、医療や介護、福祉関係者などが集まる「宮城の認知症ケアを考える会」で話をしました。
山崎先生は「認知症の人と家族の会宮城県支部」の顧問でもあり、以前から、皆が「いい先生だよね」と言うのを耳にしていました。かねてお会いしたいと思っていたところ、「家族の会」の若生栄子さんが紹介してくれたのです。
初めて会う山崎先生は、言葉は少なく、終始、淡々とした表情でした。実はこの時、「この素っ気ない人が、本当にあの評判のよい山崎先生なんだろうか」と疑ってしまいました。でも、誰もが口をそろえて褒める先生ですから、「一度会っただけでは分からないことがあるに違いない。まずはおつきあいしてみよう」と、セールスマン時代の感覚で講演依頼も引き受けました。
「人生の再構築」に納得
当日は、京都府立洛南病院の森俊夫先生が私の前に講演しました。森先生のお話で、京都では認知症を巡り、先進的な取り組みが行われていることを知りました。特に強く印象に残ったのが、「人生の再構築」という言葉でした。
そこには、「認知症と診断されたら、認知症とともに生きる人生戦略を立て直せばいい」という意味が込められています。私自身に当てはめてみると、一生の仕事と思っていた自動車販売の営業は、認知症になって断念せざるを得なくなりましたが、それを悔やんでいても仕方ありません。認知症とともにどんな人生が送れるのかを考えて、これからのプランを作り直せばいいんだ――。そう考えたら、何だかすごくしっくりきたというか、「そうか!」と納得できたのです。
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