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コラム

[歌手 はいだしょうこさん](下)父のがん手術、闘病…家族みんなで乗り越えた

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作曲家・中田喜直さんの遺志を継いで

――先日、「中田喜直の世界 ほしとたんぽぽ」というアルバムを出されましたね。中田喜直さんといえば「めだかの学校」や「ちいさい秋みつけた」などの作曲で知られる音楽界の巨匠ですが、没後17年たった今、その作品をCDにしたのはなぜですか。

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 実は、中田先生とのご縁は、私が小学生だった時まで遡ります。全国童謡歌唱コンクールでグランプリ賞に選ばれ、審査委員長だった中田先生から、「僕の曲を歌ってくれないかな」とお誘いを受けたのです。歌が大好きだった私は、その場でお引き受けして、全国各地を先生と一緒に回ってコンサートに出演しました。

 今回のCDには、金子みすゞさんの詩に、中田先生がメロディーをつけた14曲などが収められています。これらの曲は、私が子どもの頃からあったのですが、その時の私には難しくて、ちゃんと歌えたのは2曲くらいでした。

 私が宝塚音楽学校に入学した後、すでにご高齢だった先生が、体調を崩して入院されました。お見舞いで病室に伺った時、「しょうこちゃん、いつか大人になって、金子みすゞの詩の意味を理解できるようになったら、全曲歌ってCDにしてね」と、おっしゃったんです。

 先生は亡くなられて、それが最後の約束になってしまいました。

 そして、今回チャンスがあり、こうして作品として残すことができました。伴奏はピアニストの父がしてくれました。父も病気から復帰したタイミングでの制作となり、私にとっても大切な作品になりました。

 幼い私に、「歌は心ですよ」と教えて下さった先生。天国まで届くよう、心を込めて歌いました。

ステージを支える父を襲った大病

――お父様の病気も、CDを出すきっかけになったそうですね。

 父が「胃が変だ」といって病院で診てもらったところ、がんが見つかったのです。それで心配になって、大腸も検査してもらったら、さらに大きながんがあったのです。

 12時間の大手術で、胃と大腸のがんを一度に切除しました。目で見えるものは全て取ることができて、父も、手術前とほとんど変わらない元気な様子でした。ほっとしたのですが、本当に大変だったのは、その後です。

 再発を防ぐために抗がん剤治療を始め、ひどい嘔吐おうとと下痢で、あっという間に20キロも痩せてしまい、一人では歩けないほど衰弱してしまいました。

 治療を続けるかどうか、父の希望も聞いて、家族で真剣に話し合いました。医師の説明によると、抗がん剤で再発を100%防げるわけではないのです。苦しい治療を耐えても、再発する可能性があるなら、「好きなものを食べて、みんなで笑って過ごす方が、元気に暮らせるのでは」と、抗がん剤をやめたのです。

――治療を受けるかどうかは、患者自身が決めるのが原則ですが、医師が勧めた治療を途中でやめるというのは、勇気のいることだったと思います。

 悩みに悩んだ末の決断でしたが、みるみる元気になった父の姿を見て、「これでよかったんだ」と思いました。今は胃腸の調子も良く、手術からもうすぐ2年になりますが、再発の兆候はありません。

 笑うと免疫機能が高まるっていいますよね。科学的な裏付けがあるのかは分かりませんが、「家族に囲まれて笑って過ごすことが、何よりの再発予防」と、今は信じています。

 私自身、仕事で子どもたちとふれ合う機会が多く、かわいくて楽しくて、自然といつも笑っています。これまで大きな病気をせずにやってこられたのも、笑顔の持つ「健康パワー」のおかげかもしれませんね。

つらい経験を忘れず、人に思いやりを

――笑うことが健康に良いと分かっていても、厳しい芸能界に身を置いていれば、いつも楽しいことばかりではないと思います。

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 「悩みなんてないでしょ」なんて言われることもあるけど、私も生きていれば悲しいことやつらいことだってあります(笑)。本当は、一人でこっそり涙を流したりしてるんです。でも、一度泣いてすっきりしたら、また笑顔に戻ります。

 宝塚は、女性だけの世界ですし、みんな同じ目標を持って入ってきているので、厳しいこともありました。そんな時には、「自分が苦しい思いをしたら、その気持ちを忘れずに、同じようにつらい思いをしている人に手をさしのべてあげなさい」という母の言葉を思い出しました。

 母は、「どんなにつらいことがあっても、人を恨んだり、憎んだりしちゃダメですよ。それは、自分の顔に必ず出ます」とも言っていました。その人のことを考えている時間があるのなら、その時間を自分の実力をつけるために使ったほうがいい。必ずどこかで誰かが見てくれているからと。母のおかげで、「自分に与えられた事を一生懸命する。そして困っている人のことを思いやる」という考え方が、幼い頃から身に付いていたように思います。

――昨年は、女優としてNHK大河ドラマ「真田丸」に出演。また、趣味のイラストが「独創的」との評判を呼び、LINEスタンプとして発売されるなど、活動の幅がどんどん広がっていますね。今後に向けて、どんな目標を持っていらっしゃるのでしょうか。

 遠い将来のことは、あまり考えたことがないんです。いま目の前にあることを一つずつ真剣に、大切に取り組んでいけば、きっとまた新しい道が開けていくんじゃないかと思っています。

 年齢や時代の変化とともに、お仕事も変わっていくのかもしれませんね。お芝居やバラエティー番組などもそれぞれに楽しく、やりがいがありますが、やっぱり私にとって、「歌」は特別なもの。いつまでも歌い続けるために、自分の体と心の声にも耳を傾けながら、これからも歩んでいきたいです。

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はいだしょうこ 
 1979年、父はピアニストの拝田正機、母は声楽家という音楽一家の次女として、東京に生まれる。1996年に宝塚音楽学校入学。98年に宝塚歌劇団に入団、娘役で活躍し、2002年に退団。03~08年、NHK「おかあさんといっしょ」の第19代うたのおねえさんを務めた。その後もバラエティー、ミュージカル、ドラマ出演などで幅広く活躍中。12月21日午後7時から、東京・北品川のキリスト品川教会 グローリア・チャペルで、コンサート「聖しこの夜☆はいだしょうこ 歌の世界2017」を開く。

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