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人はガンのみにて生くるものにあらず

寺田次郎 六甲学院放射線科不名誉享受

聖書の言葉をもじってみました。

患者は病や怪我を持った人であって、病や怪我が主ではありません。

医師や病院の存在意義が、時に医師や患者との関係を過度に歪めるのではないかと思います。

仕事は人生の一部であって全てではないのと同じように、がんや癌を抱えた生活もまた人生の一部です。

人は本質的に多重人格です。
仕事の顔、趣味の顔、家庭の顔、友人の顔、一人での顔。
子供から大人になっていくに従い、人生経験や大人の仮面も増えていきます。
癌のような大きなストーリーが一時的に心と時間を占拠しても、それ以外の時間や思考、感情は幸福な人生を送るにあたって大事です。

癌の診断と告知を基準に「癌患者の人生」は始まりますが、癌も人生もそこから始まるわけではありません。
当たり前のようで、患者さんのために重要な理解だと思います。

とはいえ、癌の診断や生活の変化が時間や心の占有率を大きく塗り替え、そのために様々な問題が起こります。
改めて、疾患の理解や治療法も様々なら、患者さんの中での理解や感情の変化も様々なので厄介だと思います。

一昔前は若年者でも感染症で山ほど人がなくなりました。
逆に言えば、癌は生活習慣に準じた慢性疾患でもあります。
衛生環境や抗生剤の進歩により、病院の意味や価値が変質してきたということです。
そして、疾患教育や生き方教育の意味が発生してきたとも言えます。

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