科学
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「1日8千歩」が健康に良い歩き方…マラソンやジョギング、しない方が良い?
「中強度」の歩き方とは

――青柳さんが提唱する健康に良い歩き方のキーワードが、「中強度の歩き方」。「中強度」という言葉は初めて見る方も多いかと思います。具体的にはどんなことでしょうか。
青柳 運動の強さが中くらい。「体力」と言うと、皆さん「筋力」などを思い浮かべますが、「酸素を体に取り込んでエネルギーに変える有酸素的な能力」を「体力」と言います。その体力の、どの人にとっても50パーセントに相当するエネルギーで運動するのが、「中強度」の運動です。自分の持っている最高の能力の半分が、適切な強度です。従って、その人の体力によって異なり、年齢でも異なります。例えば夜、トイレに起きてゆっくり歩くことでも立派な「中強度」の運動になる人もいます。
1分間120歩、なんとか会話できる程度
――普通に体が動かせる人の「中強度」の目安は?
青柳 1秒間に2歩ぐらい。「1分間120歩」が日本人の平均的な中強度。結構速いです。
――「なんとか会話できる程度の速歩き」とありますが。
青柳 体に酸素を取り込むとき、必ず息が上がってきますね。その状態を反映した表現なのです。歌が歌えるほどだと余裕があり過ぎ、運動にならないのです。会話できないほどでは、強過ぎます。一生懸命、歯を食いしばって頑張るのは強過ぎます。
――「息が弾むぐらいで会話がなんとか成り立つ」ぐらい?
青柳 それが正しいです。
――ひとりで歩く場合は、会話する相手がいませんが。
青柳 実際に発声しなくて良いのです。「これ、会話できるかな?」とか、「歌えないかな?」とか、自分で大体わかりますね。一人でブツブツしゃべって歩いたら変です(笑)。
――1秒で2歩とのことですが、速度の目安は?
青柳 普通に歩く状態が時速約4.8キロ。それより速い、時速5~6キロの間です。
歩幅を半歩分広げてみよう
実際の「中強度」の歩きは、どんなものか。まず、下を向かずに遠く前を見る。そうすると姿勢が良くなる。2つ目は、手を卵を握る感じで下の方で軽く握り、腰の後ろに引く。軽く肘を後ろに引く。それで普通に歩き、さらに歩幅を気持ち半歩広げてみる。
腕の振りを後ろの方に意識し、肩甲骨を後ろに動かすことで、下半身だけの普通の散歩から、強度を上げて全身を使うウォーキングになる。また、後ろまで腕を振れば腰や膝などの痛みを防ぐことができる。
重要なのが歩幅。加齢で筋力が低下すると、歩幅も狭くなってしまう。歩幅を広めに取って歩くことで、背筋が伸び、速度も上がる。
――速度が速くても歩幅が大きいと、悠然と歩いている感じに見えますね。
青柳 ピッチを上げるのを意識すると、ちょこちょこした歩きになりがちなので、ストライドを意識した方が良いです。
――肩甲骨の筋肉を動かすと、肩こりが取れ、両脇の筋肉も動くのですね。
青柳 ウエストも締まってきます。重要なのは、足だけに頼らず、腕も使う。その分、エネルギー消費量が上がるので、ゆっくりしたスピードでも中強度の運動になります。膝が痛い人や、体重の重い人にはその方が良いです。
――「腕を振る」といわれると、一生懸命前に振り上げることを意識してしまいます。
青柳 後ろに引いた方が良いです。引くと足が前に出ます。肩甲骨が効果的に開き、周りの筋肉も動く。普通に歩くより、エネルギー消費量が2、3割増え、膝にも負担がかかりません。ゆっくりでも中強度になります。
1日8千歩 速歩きは20分

――「1日8000歩(そのうち 速歩き20分)」とありますが。
青柳 健康増進、老化予防のために一番効率が良い。というより、全ての病気を予防しようと思ったら、これが理想の生活です。なぜ1万歩が良くないかというと、歩数計を持って外に出て、そこから1万歩を歩く方がほとんどですね。家の中の生活で3千~4千歩になるので、合計1万3千~1万4千歩にもなり、歩き過ぎです。そうではなく、1日24時間全体で8千歩で良いのです。
――「中強度・20分」は、1日の中で分割しても構わないのですか。
青柳 大いに結構です。24時間で足し合わせた結果、8千歩と20分になれば良いのです。数秒の細切れでもいいのです。階段を上って下りて数十秒で1回の単位となり、何回か繰り返せば何分かになる。そういう発想で良いのです。
――性別や年齢の違いは?
青柳 ありません。1日は24時間と決まっていますから、若い方にとっても、お年寄りにも8千歩は同じ8千歩。人によって体力が違うので、その人なりの中強度で20分。これで、ちょうど同じです。若いから40分、という必要はないのです。20分は20分、お年寄りでも若い人でも同じ効果です。
――ウォーキングしたいが、既に足腰、特に膝が悪いという人には、ポールを持って歩く「ポールウォーキング」もありますね。
青柳
転ばぬ先の
――膝に負担かけずに、一定の運動量になる。
青柳 何でも中強度になればよいのです。その人の最大のエネルギーの50パーセントが使えれば、全て同じ効果が得られます。
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