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医療部発

コラム

里親・特別養子縁組で親になる

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がん治療優先 精子や卵子を保存できず

 先月、医療ルネサンス「がん治療と妊娠」を担当しました。

 抗がん剤や放射線による治療の影響で、がんが治っても妊娠・出産が難しくなる場合があります。将来、赤ちゃんを望むのであれば、治療に入る前に精子や卵子などを凍結する「妊よう性温存」をする必要があります。

 連載は、このことをテーマにしていました。しかし、必ずしも誰もが妊よう性を温存できるわけではありません。命に関わるがん治療が最優先で、病気のできた部位や進行度によっては、あきらめなければならないからです。

 連載では、そのようながん患者が子供をもつ選択肢として、親元で暮らせない子どもを預かって育てる「里親」や、虐待や貧困などの理由で実親と暮らせない乳幼児を実子として育てる「特別養子縁組」があることに触れました。

 そうした手段で「親」になろうとしているのが、俳優・宍戸錠さんの長女で、エッセイストの むらさき しえさん(54)です。

まだ足りない里親登録数

飼い犬と散歩する紫さん(7月、東京都世田谷区で)

飼い犬と散歩する紫さん(7月、東京都世田谷区で)

 紫さんは妊娠中に子宮 けい がんが見つかり、1999年に子宮と卵巣を摘出しました。おなかには、現在の夫との間にできた赤ちゃんがいましたが、残念ながら諦めざるをえませんでした。

 2004年に結婚。夫とチワワと暮らす生活を続けていました。紫さんは、しばらくは街で赤ちゃんや小さな子どもを見たくない心境だったそうです。あきらめた赤ちゃんを思い出してしまうからでした。

 ただ、体調が回復するにつれて、子どもを育ててみたいという思いが募るようになり、里親になることを決意しました。

 そして今年2月、いったん5歳の男の子の里親になりました。

 3か月ほど同じ屋根の下で暮らしましたが、「育てることができるようになった」という親族に、その子はゆだねることになりました。

 現在は、再び児童相談所から連絡があるのを待っています。

 実親が養育できないために保護が必要な子どもは4万5000人にのぼりますが、全国の里親登録数は約1万世帯にとどまっています。

 紫さんは「私のように、妊よう性を温存できなかったがん患者もいる。自らの健康状態を考慮した上で、里親や特別養子縁組を通じて親になるという手段があることを多くの人に知ってほしい」と話しています。(加納昭彦 医療部)

がんで妊娠できなくなった人向けに、里親制度や特別養子縁組を紹介する冊子(オレンジティ提供)

がんで妊娠できなくなった人向けに、里親制度や特別養子縁組を紹介する冊子(オレンジティ提供)

 子宮がんなど女性特有のがんの患者会「オレンジティ」(静岡県熱海市)は今年7月、がんで妊娠できなくなった人向けに、里親や特別養子縁組に関する情報を提供する冊子を作りました。子宮頸がんで子宮を摘出し、昨年、特別養子縁組で2歳の女の子の親(養親)になったオレンジティ理事長の河村裕美さん(50)の経験を踏まえて作られています。

 オレンジティは、がん経験者を対象に、里親や特別養子縁組の相談も受けています。冊子の問い合わせは、同会事務局にメール( ot@o-tea.org )で。

加納昭彦

 加納昭彦(かのう・あきひこ)

 社会部などを経て2011年4月から医療部。がん、生活習慣病などを担当。趣味はフットサルとランニング。最近、マインドフルネスを始めた。

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医療部発12最終300-300

読売新聞東京本社編集局 医療部

1997年に、医療分野を専門に取材する部署としてスタート。2013年4月に部の名称が「医療情報部」から「医療部」に変りました。長期連載「医療ルネサンス」の反響などについて、医療部の記者が交替で執筆します。

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