子どもの健康を考える「子なび」
医療・健康・介護のコラム
発達障害(7)「困る」「困らない」 環境で左右
発達障害では、精神科医で信州大付属病院子どものこころ診療部長の本田秀夫さんに聞きます。(聞き手・松本航介)
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前回、サザエさんの弟の磯野カツオ君を例に挙げましたが、発達障害の人が、その症状のために困っているか困っていないかというのは、生活している環境によって違います。同じ人でも、この環境で生活していれば困らないけれど、別の環境に移るととても困る、というようなことが時々起こるのです。
その人に合った環境の中にいれば、発達障害の症状が目立たなくて済むということがあります。逆に、症状が軽い人でも、環境が合わなければ、たちまちうまくいかなくなるということもあります。
症状が軽くて目立たない人の一例が、以前に紹介した5歳の女の子です。「保育園の昼食時にみんなが騒がしいと頭が痛くなる」と困っているのですが、そのことを周りに理解してもらえないのです。
「騒がしくて頭がガンガンして痛い」と訴えてみても、「みんなは平気なんだから、それぐらい我慢できるでしょ」と取り合ってもらえません。
発達障害の人には、様々な感覚が他の人より敏感な人がいます。昼食時に周りが騒がしくて頭が痛くなるというのがどんな感じかというと、黒板をクギでガリガリと引っかいたら、鳥肌が立つような嫌な音がしますよね。あれに近いような感覚があるのです。
他の人は平気でも、その子だけは鳥肌が立つような嫌な思いをする。それがずっと続くと、他人から見て発達障害の症状は軽くても、本人はものすごくつらい日々を送ることになる。そのために、うつや情緒不安定になってしまうことがあります。このような状態は二次障害と呼ばれています。
【略歴】
本田秀夫(ほんだ・ひでお)
1964年、大阪府豊中市生まれ。精神科医。信州大医学部付属病院子どものこころ診療部部長・診療教授。日本自閉症協会理事。著書に「自閉症スペクトラム」など。
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