落語家 林家木久扇さん
一病息災
[落語家 林家木久扇さん]喉頭がん(2)声は命 放射線治療選ぶ
声がほとんど出なくなり、2014年7月、東京都内の大学病院で、「喉頭がんのステージ(病期)2」と診断された。
5年生存率は86%と高く、決して治りにくいがんではない。だが職業柄、ただ治ればよいというわけにはいかない。声は落語家の命だ。病気になったことより、「仕事を失うことの方が怖かったですね」。
医師からは三つの治療法を示された。手術、抗がん剤治療、そして放射線治療。手術を受けると声帯が傷ついてしまい、がんは治っても声が出ないままになる恐れがある。抗がん剤は副作用で髪が抜けたり、皮膚にしみや発疹が出たりすると、高座やテレビに出ることがためらわれる。
「放射線で治療してください」。迷うことなく医師にお願いした。
治療は7週間にわたり、週5回通院しながら放射線を受ける。今までのようには仕事はできない。「より一層おもしろくなって皆様の前に帰ってまいります」とのコメントを発表し、治療に専念するために休養に入った。
テレビ番組「笑点」が気がかりでならなかったが、番組側は休養中、大喜利で獲得した座布団を元のまま積み上げておき、復帰を待つ配慮をしてくれた。それでも、初めて自分が出ていない「笑点」を自宅で見るのはたまらなくわびしい。
「復帰が遅れると、戻る場所がなくなるかもしれない」。誰からも愛される人気者でも、決して安泰ではない厳しい世界に生きている。不安が日増しに募っていった。
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落語家 林家
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