文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

コラム

野山では要注意…マダニが目に起こす病気

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック
20171108-wakakura-madani500

 このごろ、野山ややぶ、草むらに多い「マダニ」が媒介する「フレボウイルス」の感染による「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」についてのニュースをよく目にします。これまで、人間にはマダニを介してのみうつると考えられていたのですが、今年の10月、SFTSに感染したペットの犬から飼い主に感染したことが大きなニュースになっていました。

男児のまぶたの皮膚に刺さった残骸

 マダニと聞いて、眼科医として思い出したことがあります。

 5歳の男児が、家族と山にハイキングに出かけて、「右の下まぶたを虫に刺されて黒く腫れた」ということで来院しました。診察すると、虫が男児のまぶたの皮膚に刺さったままでした。その虫の頭部は皮膚の中にしっかり埋まり、腹はたっぷり血を吸って黒く膨らんでいました。

 その虫はもう生きてはいないようでしたが、担当医がピンセットで引っ張っても一部しか取り除けず、男児も怖がっていたため、その後も様子をみていました。すると1週間後、男児は「虫が勝手に皮膚から抜け落ちた」と言って、虫の残骸を持ってやって来ました。その残骸からヤマトマダニだったと判明したのです。

 男児はその後も健康状態に変化はなく、無事でしたが、マダニが媒介する感染症は、最近分かってきたSFTSのほかにもいくつか知られています。

 中でも、19世紀に欧州などで確認された「ライム病」は、マダニを介して「ボレリア」という細菌が感染するものです。今でも欧米には少なくないようですが、日本では年間10例程度しか確認されません。

 眼科ではこれまでに「ライム視神経炎」「虹彩炎」などが確認されています。ボレリアに感染すると目や神経の症状が出ることがあり、非常に少ない数ではありますが日本でも報告があります。

1 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。北里大学医学部客員教授、日本神経眼科学会理事長などを兼務し、15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ、副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人---心療眼科医が本音で伝える患者学」(春秋社)、「健康は眼に聞け」(同)、「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、医療小説「高津川 日本初の女性眼科医 右田アサ」(青志社)、「茅花流しの診療所」(同)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半には講演・執筆活動のほか、NPO法人などのボランティア活動に取り組む。

心療眼科医・若倉雅登のひとりごとの一覧を見る

最新記事