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五味院長の「スッキリ!体臭で悩まなくなる話」

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なぜ現代人はニオイで悩むのか

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女性もオジサンもおばあちゃんも…

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 近年、体から出るニオイを気にする人が増えています。でも、自分の体臭がイヤなわけではなく、「自分の体臭で他人を不快にするのではないか。人から嫌われるのではないか」と悩むのです。以前は体のニオイを気にするのはほとんど若い女性でした。それが、最近では中高年の男性や高齢者にも「加齢臭が出ているのではないか?」と心配する人が増えています。久しぶりに会った孫から「おばあちゃん臭い!」と言われたのをきっかけに、自分の体臭が気になって外出もできなくなったケースもあります。

 体臭で悩む人が増えた背景は、社会が豊かになるのに伴い、個人主義や清潔志向が強くなったことも関係していると、私は思っています。昔の大家族では「お父さん臭い!」なんて言われませんでしたね。人間関係が希薄な社会になればなるほど、ニオイに敏感になり、お互いの体臭が気になってくる傾向があります。しかし、体臭というものは、生きているかぎり誰にでもある「生活のにおい」です。ひとつの個性ですので、過度に無臭になろうとすることは、自己の存在を否定的にとらえることと、どこかでつながっている気がします。

健康悪化のサインかも

 しかしです。「たかがニオイ」と無視していられない場合も、実際にはあります。体から出るニオイが、その人の健康状態が悪化したサインであることもあるからです。たとえば、糖尿病が進むと「古くなった果物」のようなニオイがしたり、肝臓が悪くなるとアンモニア臭が強くなったりします。

 「オヤジ臭」などと 揶揄やゆ される加齢臭も、加齢とともに体の酸化が進んだことを示しています。加齢臭は、皮膚のうるおいを保つ皮脂腺の脂が酸化されてできるニオイです。これはちょうど、血液中に増加したコレステロールが活性酸素で酸化され、動脈硬化や生活習慣病に移行する過程と似ています。つまり加齢臭は一種の「メタボ臭」と言ってもよいのです。ですから、中高年になって奥様から「あなた最近ニオイが強くなったわよ」と指摘されたら、「健康に気をつけてね」という意味かもしれません。不機嫌になるより、感謝すべきでしょう。

体臭を理解し、自信を取り戻して

 私は体臭や多汗症の専門医です。約33年にわたって、体のニオイや汗で悩む多くの人を診療してきました。体臭や汗で悩む人の多くに共通する特徴があります。それは、他人を思いやる優しい心の持ち主であるということです。人に迷惑をかけても平気な人は、ニオイで悩むことはまずありません。周囲を不快にしているのではないか、と責任を感じるから悩むのです。そして、悩みが強くなると、消極的になり人間関係を避けて自分の殻に閉じこもる傾向があります。

 体臭を治療することは、こうした悩みと向き合うことなのです。患者にとって大切なのは、ニオイを消すことだけでなく、前向きで積極的な生き方ができるようになることです。体のニオイで悩んでいる読者には、この連載コラムを読むことで、少しでも自信を回復してもらえればと思います。(五味常明 五味クリニック院長)

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五味常明(ごみ・つねあき)

1949年、長野県生まれ。一橋大学商学部、昭和大学医学部卒。昭和大で形成外科、多摩病院で精神科に携わった後、体臭・多汗研究所を設立。現在は、 五味クリニック 院長として、東京と大阪で診療する傍ら、流通経済大スポーツ健康科学部の客員教授も務めている。

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