宋美玄のママライフ実況中継
医療・健康・介護のコラム
性犯罪被害者を苦しめないで
東京都北区の保育園に勤める男性保育士が、園のトイレで、通園する5歳女児の下半身などを触ったとして、強制わいせつの疑いで逮捕されたことが報道されました。女児が両親に話し、犯行が発覚したと伝えられています。
「男性保育士だから危険」ではない
このコラムでは、以前、 男性保育士の是非 について取り上げたことがあります。性暴力の加害者は男性とは限らないし、異性愛者ばかりではないので男性保育士だけを制限することに意味はない、という趣旨の文章を書きました。それに対し、「やはり男性保育士に対して抵抗がある」というコメントもいくつかもらいました。
事件が起きて、ますます男性保育士に抵抗を感じる方が増えたのではないかと心配しています。性暴力の加害者は、男性の方が多いのも事実です。ですが、「男性保育士だから危険だ」という考えに、私は引き続き異論を唱えたいと思います。
なぜか出てくる「冤罪説」
報道を見ていて、私は別のことが気になっていました。出演した情報番組でも、「5歳の子の証言に、どこまで信ぴょう性があるか」ということが、論点の一つとなったのです。
私にも5歳の娘がいます。確かに、そのくらいの子供は、記憶が 曖昧 だったり、事実と違うことを言ったりします。しかし、もし性暴力を受けた時、娘はどのようにその事実を証明すればよいのでしょうか。報道からはわかりませんが、被害者の子供に対して適切な面接が行われていることを願います。
被害者の年齢に限らず、性犯罪があった時には、「本当にそういうことがあったのか」という議論になりやすいと感じています。「被害者とされる人が言っているだけじゃないのか」「 罠 にはめたのではないか」という臆測が出やすいのです。また、痴漢の実数は、痴漢 冤罪 の数と比較にならないほど多いのに、「でも冤罪もあるでしょう」と筋違いの意見で帳消しにしようとする人が必ずいます。「疑わしきは罰せず」の推定無罪でなければならないのはもちろんですが、日本には、性暴力の被害者にとって非常に 辛 い環境があるといえるでしょう。
今回の事件で、どのような取り調べがなされ、どのような客観的証拠があったのか、続報を望みます。また、大人は、性暴力を受けたことを子供が話し出した時、決して自分に落ち度があったと思わせないように対応し、力になってあげることが大切です。(宋実玄 産婦人科医)
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「あなたは悪くなかった」
ひふみ
私も子どもの頃被害に遭いました。 自分が悪いのではないとわかったのは、大人になってから。 夫となる人に話したとき、すごく怒ってくれて、 「許せな...
私も子どもの頃被害に遭いました。
自分が悪いのではないとわかったのは、大人になってから。
夫となる人に話したとき、すごく怒ってくれて、
「許せない!!きみは許せるの?」って聞かれた時です。
「許す?!どういう意味?」
「まだ許せない気持ちがある?」
「え〜と…許すとか考えたことなかった。私が馬鹿だったし」
「その人が、あなたにすごくすごく悪いことをしたんだよ?!
まさか、そんな目に遭ったのは自分のせいだなんて思ってるんじゃないだろうね」
「………(そう思ってた!!!)」
親や警察にいろいろ追求された時間は、実際の被害の記憶よりも鮮やかにトラウマになり、自分が馬鹿だったと、いつも恥じていました。
他の部分は成長して、いろんな考え方を学んでも、あの事件については心が成長する機会もなく、子どもの時に傷ついたままだったのです。
「あなたは悪くなかった」これがわからない被害者が、きっと他にも多過ぎるほどいるはず。
それ以来、機会があれば、性犯罪の被害者に「あなたが悪かったからではない」と伝えようとしています(私から直接ではなくても、親や支援団体を通じて)。
先生がこうしてコラムに書いてくださって嬉しいです。
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ドライブレコーダー的なものを設置すれば…
キャベツ
今回の記事を読んで、確かに未就学児の意見をどう取り扱うのかは難しい問題であると気づけました。この問題は、その他多くの虐待においてもあてはまると感...
今回の記事を読んで、確かに未就学児の意見をどう取り扱うのかは難しい問題であると気づけました。この問題は、その他多くの虐待においてもあてはまると感じます。
そういう意味で、保育園などにカメラを設置して要求があれば確認が出来るようなシステムは、今よりもう少し広まってもいいかもしれません。
(しかし、些末にとりあげられたら、まともに運営できない気もしますが…)
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冤罪の可能性だって考慮することは重要
haruo
「娘はどのようにその事実を証明すればよいのでしょうか。」 それは容疑者だって全く同じです。自分が、預かっている子供や自分の子供に性的虐待を行って...
「娘はどのようにその事実を証明すればよいのでしょうか。」
それは容疑者だって全く同じです。自分が、預かっている子供や自分の子供に性的虐待を行っているとして誤認逮捕された場合に、どうやって無実を証明できるのでしょうか。肝心の子供が有罪と証言している場合、それを社会が無条件に信じたら、無罪を証明する方法は皆無です。
1980年代のアメリカの一連の悪魔的儀式虐待のように、様々な要因からの冤罪は存在するし、だからこそ「絶対有罪」とか「絶対冤罪」とかといった決め付けではなく、どちらも検証する必要があるのだと思います。そのためには、被害者の証言が信憑性があるものなのか、取調べが誘導尋問になっていないか、などのポイントは双方の視点から検証されるべきです。
冤罪というなんておかしいという主張は、ベクトルが反対なだけで、絶対冤罪と言い切ることと何ら変わらないと思います。
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