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心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

医療・健康・介護のコラム

網膜の難病「加齢黄斑変性症」…新薬の利用が進まない理由

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薬価が約15万円「お金がかかる割に……」

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 抗VEGF剤は、安全性がかなり担保され、治療の対象が広がったにもかかわらず、治療を受けない人や、受けても治療を続けられない人が少なくないようです。

 その理由のひとつに、医師と患者の間に生じる「効果」への期待の差があります。この治療を受けることで視力低下の進行が止まるか、あわよくば視力が上がり、網膜の腫れが減って医師が「よくなった」と評価しても、患者側はもっと劇的に治ることを期待していて、改善を実感できないという具合です。

 特に病気が片目だけにある場合は、左右の目のバランスが崩れて、見えにくかったり、 まぶ しさを感じるなど、目に雑音があるような「目鳴り」が生じます。治療を受けることで、「耳鳴り」ならぬ「目鳴り」の雑音のボリュームが減って両目を使えるまでにならないと、なかなか改善は実感できないものです。( 2015.6.11コラム参照 )ただし、「目鳴り」が残ろうと、良い方の目に重い病気やケガが生じるなど、万一の場合に備えるためにも、病気にかかっている方の目を治療して、できるだけましな状態にしておくことは大切です。

 もう一つの大きな問題は、治療費です。抗VEGF剤は何種類かありますが、いずれも約15万円もかかる高価なものです。保険診療が認められますが、継続して何度も注射を受ける必要があります。かつ治療がいつ終わるかが予測できないことが多いので、患者の負担は大きくなります。

 もし、6年間毎月受け続けると、治療費は1000万円を超えます。3割負担なら、患者負担は300万円にもなります。

 厚労省は高額療養費制度を設けています。ただ、この制度は年齢や所得によって上限額が決められている上、もっとずっと高額な医療費を念頭に置いたものです。抗VEGF剤の治療において、その恩恵にあずかれるケースは多くありません。

 そのような理由で、「お金がかかる割に、思ったほどよくならない」という評価が生まれやすいのかもしれません。この点でも、厚労省や製薬会社には、もう少し患者の立場に立った施策を期待したいものです。(若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

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201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。日本神経眼科学会理事長、東京大学医学部非常勤講師、北里大学医学部客員教授などを歴任。15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人 心療眼科医が本音で伝える患者学」、「絶望からはじまる患者力」(以上春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社)、医療小説「茅花流しの診療所」、「蓮花谷話譚」(以上青志社)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半は講演・著作活動のほか、NPO法人、患者会などでのボランティア活動に取り組む。

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