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心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

コラム

メタノールを飲んで両眼失明…怖い中毒症状

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「飲みすぎに注意しましょう」は正しい

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 メタノールの多くは肝臓の酵素で分解されます。その時にホルムアルデヒド、 蟻酸(ぎさん) という毒性の高い物質に変化して中毒症状を起こします。

 網膜の視細胞もアルコール脱水素酵素が豊富なので、そこに障害が起こるとの説があります。しかし、視力障害はその視細胞ではなく、視神経に直接障害が出ます。起こってしまえば不可逆的です。つまり治療法はありません。

 日本には、第2次世界大戦直後の混乱期、安い酒を求めた人々がメタノール中毒になることが多発したという、負の歴史が存在します。2014年にはロシアでの中毒事件が報道されるなど、今日でも密造酒による健康被害や、メタノールが混入する事件が世界のあちこちで起こっています。

 ところで、私は先日の定期検診で、脂肪肝を指摘されました。関連する肝臓の数値が若干高いことが分かり、一時的に少しだけお酒を控えています。

 そういう事情もあり、いろいろ調べていると、きちんと造られた蒸留酒でも、製造過程で非常に少量のメタノールが発生することが、本などに書かれています。しかも、メタノールはエタノールよりも肝臓での分解優先度が低い。つまり、分解されるのはエタノールの後になります。

 もちろん、この場合の残留メタノールは、中毒量からははるかに少ないのですが、中毒には個人差があります。もし飲みすぎたら、悪酔い、二日酔い、ひょっとすると軽い中毒が起こらないとも限りません。

 「飲みすぎに注意しましょう」はやはり正しいフレーズのようです。

(若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

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201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。日本神経眼科学会理事長、東京大学医学部非常勤講師、北里大学医学部客員教授などを歴任。15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人 心療眼科医が本音で伝える患者学」、「絶望からはじまる患者力」(以上春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社)、医療小説「茅花流しの診療所」、「蓮花谷話譚」(以上青志社)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半は講演・著作活動のほか、NPO法人、患者会などでのボランティア活動に取り組む。

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