心療眼科医・若倉雅登のひとりごと
医療・健康・介護のコラム
メタノールを飲んで両眼失明…怖い中毒症状
今年の春と夏に、メチルアルコール(メタノール)を飲んだために中毒性視神経症になった20歳代の患者2人が出ました。
純粋なメチルアルコールは主に工業用で、家庭など身近にはないものです。ただ、燃料用や溶剤として販売されていますから、入手しようとすればできなくはありません。
今回の患者の1人は男性で、実験室にあったメタノールを、自殺目的で多量に飲んだものでした。アパートで意識を失っているところを家族が見つけ、病院へ運びました。命は助かったものの、両眼とも完全に失明しました。
もう1人は女性で、長期間あるいは繰り返してんかん発作が起こり、その影響で意識が低下する「てんかん重積状態」にあったようです。その時に「過って飲んだらしい」と話しています。この女性は夜の仕事をしていましたが、「アルコールは嫌いなので自発的に飲んだわけではない」とも言っていました。しかし、なぜメタノールが近くにあったのかはわからず、まさにミステリーです。
この女性は、視界がぼやけるので近くの眼科に行ったところ、すぐに大きな病院へと紹介されてきました。
彼女を診察したところ、この中毒に特徴的な視神経乳頭の非常に深いへこみ(陥凹)が両眼にあり、メタノールによるものと断定しました。先の男性より飲んだ量が少なかったのでしょう、何とか0.1の視力は残りました。
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