ニャるほど!社会保障
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若い世代は損って本当?
高齢世代より重い負担
若い世代は損って本当?
Q 社会保障の話題で「若い世代は損」と言う人がいたの。本当?
A 社会保障の世代間格差の話だね。年金や医療といった社会保障には主に保険料と税金が使われている。支払った税金や保険料に対して、どれくらいのサービスを受けられるかを考えた時、若い世代は高齢世代より負担が重いという指摘がある。
Q 例えば?
A 会社員らが加入する厚生年金で考えよう。標準的な収入の会社員の夫と同年齢の専業主婦の妻の世帯の場合、国の試算では、現在72歳の夫婦が平均余命まで生きれば総額5200万円を受け取れる。負担した保険料は1000万円で、差は5・2倍だ。22歳の夫婦なら保険料は3400万円。年金額は7900万円だが、払った額の2・3倍どまりだ。
Q ずいぶん差があるわ。
A 社会保障は子育て支援や生活保護、雇用など幅広い分野にわたる。そのうち、2015年度に高齢者向けの年金、医療、介護などにかかった費用は20年前の2倍近い約78兆円。これは社会保障費全体の7割にあたる。急増する社会保障費は税や保険料ではまかないきれず、国は国債を発行し続けている。この借金は若者や今後、生まれてくる将来世代が返すことになる。
Q ひどい話ね。
A 数字だけを見て「若者が損だ」とは言えないんだ。今の高齢者の親世代は年金制度が十分ではないため、親を養っていた人は多い。介護保険がないため親の介護負担が重いなど、社会状況が違うことも考えた方がいいね。
ただ、少子高齢化で支える側の若い世代が減っているのは事実。負担感に加え、低賃金で仕事を失うリスクが高い非正規雇用が増えるなど状況は厳しい。資産が多い高齢者は今より多くの費用を負担すべきだし、高齢者向けのサービスを減らすべきだという意見もある。14年衆院選の投票率は、20歳代が32・58%、60歳代は68・28%。政治家は投票率の高い高齢者に負担を求める政策には尻込みしがちだ。若い世代も投票に行き、政策に声が反映されるようにしたいね。(田中ひろみ)
(2017年10月22日 読売新聞朝刊掲載)
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