安田記者の「備えあれば」
医療・健康・介護のコラム
手ぶらでいつでも墓参り
親の墓をどうするか――。気になるミドル世代が多いと思います。私は、父の死期が近いことを感じた2013年夏、初めて墓の購入を考えました。
父の故郷・兵庫県に先祖代々の墓があります。しかし、両親も私も、住まいは東京。墓参りが大変です。父は長男ではないので、その墓を継ぐことを求められていませんでした。そこで都内に墓を買ったのです。
ある寺院が経営・管理しているのですが、本堂や寺務所などとともに墓地も、地上5階、地下1階の建物に収まっています。墓石を建てる必要はなく、遺骨は「厨子」という箱に納められ、建物内の納骨堂にまとめて保管されています。厨子には、家名を彫った御影石の銘板がついています。
お参りは礼拝口で行います。二つのフロアに分かれて計24か所あります。礼拝口にある読み取り機に専用のIC(集積回路)カードをかざすと、父の遺骨を納めた厨子が、納骨堂から礼拝口に1分で自動搬送されます。寺院がいつも生花を供え、線香も常備。天候にかかわらず手ぶらで墓参りができます。価格は約80万円、年間管理費が1万2000円かかります。
この都会的な合理性に強くひかれ、他の墓の見学などせず、母と相談し購入しました。父は会話ができない状態だったので意向を聞けませんでしたが、約3週間後、安心したかのように息を引き取りました。
自宅から1時間かからないので、よく墓参りに行きます。別の用事で近くまで行った後に立ち寄ったり、墓参りをした後、映画を見たり。安田家の厨子には8人分の遺骨を納められるので、母も私も妻も、この墓に入る予定です。
墓は多種多様です。ロッカーのような屋内の墓、墓石の代わりに木や花を植える樹木葬、女性限定の墓もあります。墓を建てなければならないという法律はありません。海への散骨も注目されています。
葬式後、落ち着いてから検討する人も大勢いますが、納得のいく墓を造るために、早めに情報収集を始めるのも一案です。(社会保障部 安田武晴)
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このコラムでは、父親を見送った記者(48)が、最期に備えるための情報をお伝えしています。
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