文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

在宅訪問管理栄養士しおじゅんのゆるっと楽しむ健康食生活

医療・健康・介護のコラム

炭水化物抜きダイエットの落とし穴とは?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

「食べる楽しみ」は「生きる楽しみ」の一つ、ですよね

炭水化物抜きダイエットの落とし穴とは?

炊き立ての新米ごはんに辛子明太子。いくらでもおなかに入っちゃいますが、糖質量とエネルギー量には要注意です

 先日、初めて岩手県の釜石市を訪れました。

 新花巻駅からJR釜石線の各駅停車に乗り換えて2時間。青空の下、単線列車はススキと稲穂の間をゆっくりと走ります。深緑の里山を背景に、風になびく黄金色の稲穂を眺めていると、雲の影が稲穂の上を動いていくのが見えました。車窓の風景がまるで絵画のようなので、「これが、宮沢賢治が思い描いた理想郷『イーハトーブ』なのかも……」とぼんやり考えていたら、陸中大橋という駅で本物の蒸気機関車「SL銀河」とすれ違ったのです!

 それを見て、「やっぱりここはイーハトーブだ」と確信しました。そして、収穫目前の稲穂を眺めながら、食いしん坊の私が思い浮かべたのは、光り輝く炊き立ての新米です。

 炭水化物は、消化吸収できる「糖質」と消化されない「食物繊維」に分けられます。

 最近、ダイエット法としても目にすることが多い「炭水化物抜き」というのは、「主食に含まれる糖質を抜く」という意味で使われることが多いようです。

 とはいえ、仮に私が糖尿病になったとしても、主食の炭水化物を完全に抜くことはできないと思います。薬と食事療法全体で糖尿病をコントロールできるのであれば、炭水化物の中でも大好きな白いごはんを外すことはないでしょう。

 在宅訪問栄養指導をしていると、「大好きな料理を食べられないくらいなら、死んだ方がまし」と言う方がいます。その気持ち、とてもよく分かります。「食べる楽しみ」は「生きる楽しみ」に深くつながっているのですね。

なぜ、野菜中心なのに痩せないのでしょうか

【落とし穴その(1)】「炭水化物が多い野菜は意外に多い」
 ある友人から「炭水化物抜きダイエットをしているのに、全然痩せないんだけど、どうしてだろう」と相談されました。このような相談は医療や介護の専門職からも多く、どうやらみなさん「壁」にぶち当たっているようです。

 「炭水化物抜きダイエット」とは、ごはんやパン、麺類などの糖質を多く含む食品は可能な限り控え、もしくは一切取らず、野菜類と肉・魚介類、豆類、卵や乳製品をしっかり摂取するというものです。中には、この方法で劇的に体重を落とせた方もいるのですが、「ほとんど体重が変わらない」と訴える方もいます。

 ある友人は、炭水化物を抜く代わりに、野菜でおなかをいっぱいにしていたそうですが、よく聞いてみると「カボチャが好きで、サラダによく入れるのよね」とのこと。カボチャは、とても糖質が多い野菜です。そう伝えると、「えっ!そうなの? どうりで腹持ちがいいと思ったわ」と納得していました。

 「炭水化物が多い野菜」とは、カボチャ、トウモロコシ、レンコン、芋類、ユリネ、豆類(大豆以外)などです。これらの食品は、「糖尿病食事療法のための食品交換表第7版」では米やパンなどと同じカテゴリーに分類されているほどです。糖尿病の方は、これらの食品を食べる時には、主食の量を少し控えるなどして調整する必要があるのです。

【落とし穴その(2)】「かえってエネルギーを取りすぎているかも?」
 炭水化物抜きダイエットの一番の魅力は、「主食は食べず、おかずだけ食べる」という「分かりやすさ」ではないでしょうか。「おかずはどれだけ食べてもいいらしいよ」と自信満々に教えてくれる方もいますが、それはおすすめできません。

 例えば、仕事内容が主にデスクワークの成人男性(40代)に必要な1日のエネルギー量は、体格にもよりますが1日2500キロカロリー程度です。ごはんの目安は1食250~300グラム程度です。仮に1食のごはんが250グラム(茶碗1.5杯程度)だとすると、エネルギー量は420キロカロリー。これをもし「鶏のからあげ」に置き換えてみると約5個分。つまり5個未満でないと総エネルギー量は同じになってしまいます。からあげをうっかり食べすぎてしまうと、「ごはんの代わり」どころか、ごはんを食べるよりエネルギーを多く取ってしまうことになりますね。

 つまり、「主食を食べない」という安心感が、「うっかり食べすぎ」につながる恐れがあるということです。どんなに主食を抜いていても、体が必要としているエネルギー量よりも多く摂取した分は、体脂肪に変えられてしまいます。

 「なにをどれだけ食べればいいのか」が分からないまま、安易に炭水化物抜きダイエットをするよりも、食事量全体を6~7割程度に抑えて、間食や外食をなるべく控え、時間をかけながら体重の変動を見守る方が、ダイエットの近道になるかもしれません。(塩野崎淳子 在宅訪問管理栄養士)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

塩野崎顔2_100

塩野崎淳子(しおのざき・じゅんこ)

 「訪問栄養サポートセンター仙台(むらた日帰り外科手術WOCクリニック内)」在宅訪問管理栄養士

 1978年、大阪府生まれ。2001年、女子栄養大学栄養学部卒。栄養士・管理栄養士・介護支援専門員。長期療養型病院勤務を経て、2010年、訪問看護ステーションの介護支援専門員(ケアマネジャー)として在宅療養者の支援を行う。現在は在宅訪問管理栄養士として活動。

在宅訪問管理栄養士しおじゅんのゆるっと楽しむ健康食生活の一覧を見る

1件 のコメント

コメントを書く

エビデンスはどこに?

ごめごめす

記事を初めて拝見しました。 糖質制限をしっかりと学び、実践し、患者様にも伝えてる身としてお聞きしますが、この記事のエビデンスはどこにあるのでしょ...

記事を初めて拝見しました。
糖質制限をしっかりと学び、実践し、患者様にも伝えてる身としてお聞きしますが、この記事のエビデンスはどこにあるのでしょうか?
ランセットでも証明されてきてる事実に対して、このような内容はいかがなものかと思います。、

つづきを読む

違反報告

すべてのコメントを読む

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事