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心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

医療・健康・介護のコラム

薬の服用から数年後…遅発性の副作用の苦しみ

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鈍い医師、製薬会社…長期間のモニターが必要

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 しかし、こうした事実については、医師も製薬会社もかなり反応が鈍いと思います。

 そもそも、薬物を開発する時に行う副作用調査は、使用から間もない急性の症状に限られています。市販後に行う調査も、流通してから6か月間に限って調査するという原則があります。

 それゆえ、数年から10年以上もたってから出現してくる、例えばベンゾジアゼピン系薬物による眼瞼けいれんといったものは、調査の対象外です。診療する医師が「おかしい」と気づくかどうか、その視点に委ねられているのが現状です。

 副作用報告を出そうにも、服薬期間が長すぎて、しばしば使用薬物が変更されたり、処方する医師が変わります。患者自身の記憶もあいまいになりやすいため、調査は困難です。しかも、同時に服用している薬も多く、因果関係がわかりにくいため、結局報告は出ない(出せない)ことになります。

 さらに困るのは、症状が表れてきたころには、薬の特許が切れてジェネリック(後発医薬品)がたくさん出ている時代になっており、責任の所在があいまいになることです。

 製薬会社でも監督官庁でも、そのころには、すっかり昔の薬のことは忘れてしまい、結局副作用はなかったことになってしまうーー。そんな怖さが潜在的にあるのです。

 とくに、薬物の長期投与による人体への影響は、その薬の開発時には想定していません。

 長期にわたり薬の副作用をモニターして、遅発性の小さな変化でも検出できるシステムを作っておく必要があるのではないでしょうか。そうしないと、誰も気付かないうちに、人類がいつまでもその薬害を受け続けるという不幸な事態になりかねません。

 (若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

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201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。日本神経眼科学会理事長、東京大学医学部非常勤講師、北里大学医学部客員教授などを歴任。15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人 心療眼科医が本音で伝える患者学」、「絶望からはじまる患者力」(以上春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社)、医療小説「茅花流しの診療所」、「蓮花谷話譚」(以上青志社)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半は講演・著作活動のほか、NPO法人、患者会などでのボランティア活動に取り組む。

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