文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

知りたい!

ニュース・解説

2人チェック望ましいが「1人病理医」44%…AIが医師不足補う可能性

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 東北地方の公立病院に勤める病理医のAさん(60歳代)は日々、患者から採取した組織を顕微鏡でみている。がん細胞があるかどうかなどを特徴によって見極める病理診断という作業で、結果は主治医に報告され、治療法を決める土台となる。

 病理診断は、病理医2人でチェックするのが望ましいとされる。見落としや見間違いを防ぐためだ。しかし、この病院の病理医はAさんだけ。「診断を誤っても誰も指摘してくれない。精神的な重圧は大きい」と打ち明ける。

 実はこうした病院は珍しくない。日本病理学会が2016年に実施した調査では、病理診断を行う844病院のうち「1人病理医」は44%を占めていた。

 こうした病理医不足を補う可能性があるのが、人工知能(AI)だ。

 同学会は今年度から、AIの活用によって病理診断を支援するシステムの開発を始めた。AIによるチェックで見落としを減らせる可能性があるという。同学会でシステム開発を進める東京大学准教授の佐々木毅さんは「AIで診断の精度が高まれば、適切な治療が増える。患者のメリットは大きい」と語る。

 保健医療分野におけるAIを活用する動きはこれにとどまらない。厚生労働省の有識者会議は6月、病理などの画像診断の支援、医薬品の開発、ゲノム医療、介護・認知症など六つの領域で重点的にAI開発を進めるべきだとする報告書をまとめた。これを踏まえ、同省は来年度予算として、AI関連に約47億円を要求するなど、力を入れている。

 今回の衆院選では、主要政党は公約で、AIの活用などを掲げている。膨大な遺伝情報を扱うゲノム医療で、AIは重要な役割を担う。「医療の質を向上させるAI開発の停滞は許されない」と佐々木さん。

 こうした最新技術は医療の質の向上と効率化につながる一方、巨額の費用がかかる。限られた財源のうち、何を優先するべきか。それを念頭に、各候補者の演説に耳を傾けたい。(加納昭彦)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

知りたい!の一覧を見る

最新記事