文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

麻木久仁子の明日は明日の風が吹く

コラム

「残さず食べなさい」は教育ですか?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

大嫌いだったうなぎが…

「残さず食べなさい」は教育的なのか

主宰する「美彩薬膳講座」にて、レシピの試作中です

 私は子供のころ、うなぎが大嫌いでした。口に入れられないほど嫌いでしたが、幸いなことに、高価なうなぎを私の口に押し込もうとする人はいません。みんな喜んで私の皿からうなぎを取っていくので助かりました。

 それが30歳を過ぎて妊娠し、ひどいつわりに襲われたとき、他のものはだめなのに、なぜかうなぎだけが食べられたんです。おかしなもので、人の味覚はひょんなことで変わるんです。

 ですから、娘が小さいときにも「嫌いなら食べなくてよし」。食材が無駄にならないように初めから盛り付けないか、シェアするか。どうしても残す時は、そっと皿の端に寄せなさいと教えました。大人になった今は、嫌いだったニンジンだのピーマンだの、なんでも食べています。

まずい給食こそ問題だ

 食に関して、最近、気になるニュースがいくつかあります。学校の給食にまつわるものです。一つはある中学校で給食として出されているお弁当の食べ残しが、あまりにも多いという話。単に弁当がまずいからではなく、異物混入が幾度もあったことが明るみに出ました。とうとう提供中止ということになったようです。

 そしてもう一つ。ある小学校の教師が、好き嫌いのある子供たちに給食を無理に食べさせた「行きすぎた指導」の問題です。子供たちは 嘔吐(おうと) しました。背景には「残さず食べる」という指導が根強くあるようです。

 子供たちはなぜ食べないのか、なぜ残すのか。

 本来、食事というのは 美味(おい) しく楽しく食べるものです。学校給食に教育的な意義を求めるのなら、美味しく楽しく食べる日々の経験が、自然に食への感謝の気持ちへとつながっていくよう導くべきです。無理に押し付けて、給食の時間がうっとうしいものになってしまっては逆効果。「まずいから残す、というのは 贅沢(ぜいたく) だ」という意見もあるようですが、そもそも育ち盛りで放っておいてもよく食べる時期の子供たちが残す、それも大量に残す、とはどういうことか。むしろ食材をそんなにまでまずくしてしまうことこそ、天の恵みへの 冒瀆(ぼうとく) といえそうです。

 どんな食材にも、食材そのものの味があります。本来は、適量の塩味があるだけでも十分美味しいはずなのです。どういじったら、そんなにまずくなるのか。ここは子供たちの味覚を信じて、早めに改善してほしかったと思います。

1 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

asagi

麻木久仁子(あさぎ・くにこ)
 1962年、東京都生まれ。学習院大学法学部中退。テレビ、ラジオ番組で司会者、コメンテーターとして活躍するほか、読書家としても知られ、本の紹介サイトHONZや新聞で書評を書いている。2010年に脳梗塞を発症。12年には両胸に発症した初期の乳がんの手術を受け、現在もホルモン療法中。講演会や取材などで闘病体験や検診の大切さを伝えている。2016年には国際薬膳師の資格を取得した。

麻木久仁子の明日は明日の風が吹くの一覧を見る

10件 のコメント

コメントを書く

努力することを放棄させない

mitu

食べることに限らず、無理させないということが行き過ぎていて、わがままで忍耐力のない子供が増えているように感じます。 トラウマになるほどの肉体的・...

食べることに限らず、無理させないということが行き過ぎていて、わがままで忍耐力のない子供が増えているように感じます。

トラウマになるほどの肉体的・精神的苦痛を与えるのはもちろん教育ではありません。ですが、はじめから努力を放棄させることも教育とはいえないのではないでしょうか。

嫌なことや嫌いなものに向き合わせるということは必要なことだと思います。頑張れた、我慢できたということが自信や耐性をつけることにつながるのではないでしょうか。
このとき、どこまで頑張れるかが個によって違うので見極めが難しく、いじめ・虐待と捉えてしまう人もいるのかもしれません。
悩ましいところです。

つづきを読む

違反報告

教員側は本来親が教えなければいけないマナーや、食事のバランスなどを教えなければいけません。親がするべきはずのことを任されているのが現状です。そう...

教員側は本来親が教えなければいけないマナーや、食事のバランスなどを教えなければいけません。親がするべきはずのことを任されているのが現状です。そういう風に家で、嫌いだから食べたくない。では学校でも。となると、全く野菜を食べない子が明らかに増えるはずです。本当にそれでいいんですか?給食はファミレスではありません。教員側も食育の授業を楽しくしたり、色々工夫をしています。その現状を理解していただきたいものです。

つづきを読む

違反報告

専門家の意見を聞きたい

じぞう

我が家も早々に「無理強い」するのはやめて、「食べられるものだけを楽しく食べる」という方針に変えて子育てしていますが、本当にそれでいいのか? とい...

我が家も早々に「無理強い」するのはやめて、「食べられるものだけを楽しく食べる」という方針に変えて子育てしていますが、本当にそれでいいのか? という疑問が消えません。
何年たっても、生野菜は全く箸をつけない、煮物も全く食べず、レストランで「残さずに食べられるものは?」と聞くと「フライドポテトの単品」以外は全部アウトというような有様です。
私や妻が美味しいと思う料理でも嫌いな食材が少しでも混じっていると箸をつけません。
しかたなく子どもの食べ残した料理は私と妻とで残さず食べていますが、「調理をしていただいたことに感謝して、嫌いなものでもまず一口は食べてみる」というような教育は本当に不要なのでしょうか?
「無理に食べさせることで、むしろその料理やその食材が大嫌いになるのでは?」と思って無理強いをせずに来ましたが、それではいつまでも好き嫌いが治らず、将来は「他の人と美味しく食事することができない大人」になりはしないかと心配です。
ぜひ専門家の方のご意見を伺いたいと思っています。

つづきを読む

違反報告

すべてのコメントを読む

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、ヨミウリ・オンライン(YOL)、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事