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時を重ねる

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世間体離れ 遠慮せず発言 作家 落合恵子さん

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 <社会的弱者とされる人々に光を当てる作品を書いてきたが、このところ、加齢をテーマにした著書を立て続けに出版している。目下、老いは大きな関心事の一つだ。>

「母の介護をしていた時、美容院に行く時間が惜しくて長持ちしそうなこの髪形にしたら、母が笑顔になってくれた」という。それ以来、髪形を変えられないでいる。「友人からは『怒髪ヘア』と言われています」(東京都港区で)=繁田統央撮影

「母の介護をしていた時、美容院に行く時間が惜しくて長持ちしそうなこの髪形にしたら、母が笑顔になってくれた」という。それ以来、髪形を変えられないでいる。「友人からは『怒髪ヘア』と言われています」(東京都港区で)=繁田統央撮影

 昔は夜型でしたが、最近は午前6時前に目覚める。ベランダでプランターの植物に水をやり、育ち具合を眺めるのが30年来の習慣です。まいた種が芽吹いたのを見ると元気が出る。 刹那せつな 的になりがちな暮らしを豊かにしてくれます。

 最近、固有名詞がすっと出てこなくなりました。仕事の5時間のうち1時間は探し物です。3月までは体調も今ひとつで、これまで当たり前だった健康を意識するようになった。

 母が介護を必要としたのは73歳からなので、当然といえば当然。でも私にとって「71歳」は初めてです。これからどう過ごしていくのか、興味津々。アンチエイジングがはやりですが、アンチ・アンチエイジングで生きたい。

 今日の続きが明日もあるとは限らない。多くの友人や先輩の死が身近にあり、今は1日がとても貴重です。

 <平日の午前中は執筆。午後からは主宰する子どもや女性、社会的マイノリティーのための本の専門店「クレヨンハウス」(東京都港区)に出勤する。週末は講演のため地方へ。今も多忙な時間を過ごす。>

 1976年、31歳の時に開いたクレヨンハウスは、今年で40年になります。私は今で言う「シングルマザー」の子として生まれ、様々な差別を経験しました。その日々の中で、子ども心に、差別は恥ずかしいことだと知った。女性や子ども、お年寄り、障害がある人など社会の周縁に置かれる人たちと手をつなぎたいと願い、作ったのがクレヨンハウス。大阪にもあります。

 本やおもちゃ、オーガニック素材の衣料品などを扱っています。有機野菜を扱う食品店を併設したり、育児やオーガニックをテーマにした雑誌を発行したり。雑多なことをしているように見えて、命、人権を守るという点で全部つながっている。今は3世代で通ってくださる人もいます。

表現できる立場の利点 十分に使い切りたい

 <50歳代の頃から、次世代に何をどう手渡すかを意識していた。2011年の東日本大震災後、その思いは、より一層深まった。>

 震災後は次の社会の有り様が切実なテーマになっている。でも、若い人に自分の思いを伝えるには、今まで使ってきた言葉では届かない。どういう表現ならいいのか。

 出版社の編集者もラジオ局のディレクターも年下です。書いたものには何も言われなくなったけれど、反対に私から「ことばの勉強をさせてほしい」と頼んでいます。若い人に教えを請うことができる自分でよかったと思う。

 表現できる立場にあることを感謝しながら、その利点を十分に使い切りたい。加齢からもらった喜びの一つが、遠慮せず言いたいことを言えること。誰かに迷惑をかけないようには気をつけますが、世間体はもういりません。

 <この夏、また新しい試みに挑む。「おとな」の洋服をデザインし、発売するのだ。>

 自分が着たい服が売っていない。だったら自分で作ろうと。オーガニックコットンでシンプルなデザイン、値段もお手頃なおとな服、名付けて「ラジカルシック」。上着とスカート、パンツで、色は白と黒。白い服は汚したら別の色に染め直せる仕組みを作りました。収益の一部は東日本大震災の被災地に寄付したい。

 7月に発売するうちの雑誌でグラビア特集をします。モデルは作家の澤地久枝さん、渡辺一枝さん、女優の木内みどりさん、20歳代の女性。エイジレス、ボーダーレスを表せれば、と思っています。(聞き手・辻本洋子)

2016年6月5日掲載(略歴は当時のもの)

 おちあい・けいこ 1945年、栃木県生まれ。文化放送アナウンサー時代、ラジオの深夜放送で人気を集めた。退社後は作家。海外の女性をテーマにした作品や童話の翻訳も手がける。97年~2007年、読売新聞(大阪版)「人生案内」の回答者。近著に「質問 老いることはいやですか?」「おとなの始末」など。

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tokiwokasaneru-200

時を重ねる
年齢を重ねたからこそ得られる楽しみや境地がある。高齢期を迎えた各界の著名人に思う存分語ってもらいます。

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