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いのちは輝く~障害・病気と生きる子どもたち

コラム

口唇口蓋裂を受け入れられなかった家族

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ミルクを一滴も飲めないまま

 話し合いは不調に終わりました。児相の説得も失敗したのです。では、「親権の制限はできますか」と職員に尋ねると、彼らは首を横に振って「あとは先生たちで解決してください」と言って病院を去りました。

 ここから先、何ひとつ話は進展しませんでした。赤ちゃんには点滴が入れられていましたから、最低限の水分は体内に入ります。しかし、ミルクを一滴も飲んでいませんから、日ごとに赤ちゃんの体は衰えていきます。やがて、家族は面会にも姿を現さなくなりました。

 児相の人たちの判断は、あれで正しかったのか。警察に通報した方がいいのか。いや、警察は何もしてくれないだろう。21世紀の現代にこんなことがあってもいいのか……と私は 暗澹(あんたん) たる思いでした。

 もうあとは、餓死するだけです。小児外科と産科で話し合い、結局赤ちゃんは産科の新生児室で診ることになりました。したがって、私は直接赤ちゃんの最後の日々を目にしていません。のちに聞いた話では、一人の産科医が、時間さえあれば赤ちゃんのそばに寄り添っていたそうです。

 赤ちゃんが亡くなった後、病棟にはいつもと変わらない日常の風景が戻っていました。私にはそれが不満でした。これは小児外科や産科だけの問題ではない。家族が手術を拒否した時に、どう対応するかを病院全体で話し合うべき問題だと思ったのです。しかし、そういう問題意識の広がりはありませんでした。考えたくはありませんが、もしや医師の中にも、手術を拒否した家族に共感した人がいた、ということはないでしょうか?

 私は今になって思います。もっと別な方法はなかったのだろうかと。たとえば、障害とともに生きている子どもとか、先天性の病気を治して生きている子どもやその親たちを実際に見てもらえば、赤ちゃんの家族も手術を受けさせる気になったのではないか。この赤ちゃんの一件は、私の心の中にずっと暗い影を落としています。生涯忘れることはないでしょう。(松永正訓 小児外科医)

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inochihakagayaku200

いのちは輝く~障害・病気と生きる子どもたち

 生まれてくる子どもに重い障害があるとわかったとき、家族はどう向き合えばいいのか。大人たちの選択が、子どもの生きる力を支えてくれないことも、現実にはある。命の尊厳に対し、他者が線を引くことは許されるのだろうか? 小児医療の現場でその答えを探し続ける医師と、障害のある子どもたちに寄り添ってきた写真家が、小さな命の重さと輝きを伝えます。

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松永正訓(まつなが・ただし)

1961年、東京都生まれ。87年、千葉大学医学部を卒業、小児外科医になる。99年に千葉大小児外科講師に就き、日本小児肝がんスタディーグループのスタディーコーディネーターも務めた。国際小児がん学会のBest Poster Prizeなど受賞歴多数。2006年より、「 松永クリニック小児科・小児外科 」院長。

『運命の子 トリソミー 短命という定めの男の子を授かった家族の物語』にて13年、第20回小学館ノンフィクション大賞を受賞。著書に『小児がん外科医 君たちが教えてくれたこと』(中公文庫)、『呼吸器の子』(現代書館)など。2017年11月、『子どもの病気 常識のウソ』(中公新書ラクレ)を出版。

ブログは http://wallaby-clinic.asablo.jp/blog/

名畑文巨(なばた・ふみお)

1958年、大阪府生まれ。外資系子どもポートレートスタジオなどで、長年にわたり子ども撮影に携わる。その後、作家活動に入り、2009年、金魚すくいと子どもをテーマにした作品「バトル・オブ・ナツヤスミ」でAPAアワード文部科学大臣賞受賞。近年は障害のある子どもの撮影を手がける。世界の障害児を取材する「 世界の障害のある子どもたちの写真展 」プロジェクトを開始し、18年5月にロンドンにて写真展を開催。大阪府池田市在住。

ホームページは http://www.fumionabata.com/index.html

名畑文巨ロンドン展報告

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312件 のコメント

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明確な殺意を感じる

あん

この状況下で通報しないとは… 障害は赤ちゃんの身体ではなく、この事件にかかわった大人達です。

この状況下で通報しないとは…
障害は赤ちゃんの身体ではなく、この事件にかかわった大人達です。

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え?

まる子

救える命を前に、何もできない、しようとしない、日本の法律が一番の悪ですが、悪いとか悪くないとかよりも、この可哀そうな赤ちゃんの死に、法律の前に何...

救える命を前に、何もできない、しようとしない、日本の法律が一番の悪ですが、悪いとか悪くないとかよりも、この可哀そうな赤ちゃんの死に、法律の前に何も出来ず、ただ死なせるしかなかった医師の苦悩や怒り、あるいは自己憐憫に対しての批判の多さが目立つ一方で、この赤ちゃんの両親に対して、同情的な意見を持つ人達の存在の多さに改めて、いかに今の日本をけん引する世代の人達の価値観が、利己的かつ自己防衛的なものに変化しているのかに気づかされます。この両親は悪いですよ。だって、だって、この親臨んでセックスして、その遺伝子の組み合わせの結果、この世に生まれさせてこられたのが、この何の罪もない赤ちゃんなんだから。少なくとも、この赤ちゃんの誕生をこの親たちも家族も心待ちにして待っていたはず。それなのに、生まれてきたわが子が、想定外の状態で生まれてきたから、母乳を与えることもなく、その死を看取るでもなく、委ねるでもなく、拒絶することで、投げ出し、他人にその責任をなすりつけたこの親が、悪くないなんて、そんなバカみたいなこと、ないでしょ。

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覚悟がなければ出産してはいけない、のか?

強くない人間

障碍がわかったからと言って命を棄てることを悪い事とするのは、いくらかは昔よりも障碍者でも健やかに生きていける世界になったからとも言えるし、障碍と...

障碍がわかったからと言って命を棄てることを悪い事とするのは、いくらかは昔よりも障碍者でも健やかに生きていける世界になったからとも言えるし、障碍というものが認知されてもいるのだろう。

ただ、覚悟がなければ産まなければいいとの意見に対しては、覚悟がなければ産ませてもらえない時代になったのだなと感じる。
ほんの数代前にはなかった感覚だろう。

覚悟を得られなかったこの御両親を責める意見は余りに酷だと感じる。
障害など多様性を認める世の中になってきたはずだが、変なところで寛容性が失われつつあると感じる。

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