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いちばん未来のシニアのきもち

医療・健康・介護のコラム

高齢者には、トイレがこわい?

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個室だからこそのお手洗いの難

 確かに、指示ボタンのそばに、説明がついていることもあります。でも、薄暗い個室の中では、小さな文字は読めません。

 どうしよう、とじりじりしているだけでもつらいでしょうが、認知機能に障害があると、お手洗いの個室のように、狭く閉じられた空間では不安が高まり、混乱しやすくなります。場合によっては、お手洗いが「こわい場所」になってしまいます。

 困るのは高齢者、とは限りません。

 アメリカから来た私の友人は、日本のお手洗いの流し方がわからず悩んだ末に、意を決して個室の扉を開け、順番を待っていた次の人に「流し方がわからないので教えてほしい」と頼んだそうです。

 幸い、頼まれた若い女性は嫌な顔をせずに親切に教えてくれたけれど、とても勇気のいることだった、と友人は言っていました。

 私の研究所では、前述の水浸し事件のあと、会のある時間帯は温水洗浄の操作盤にシートを貼ってボタンを隠すようにしました。一方で、便座に座るとすぐ目につくところに、「流すレバーはうしろにあります」という紙を貼りました。

 高齢者とお手洗いに関しては、いろいろな声が上がっています。

 「お手洗いの機能は、シンプルでわかりやすいほうが安心」

 「荷物をかけるフックを、もう少し低いところにつけてほしい」

 「夫が認知症です。慣れない場所で、一人でお手洗いに入るのは無理。人目を気にせず介護者も一緒に入れるお手洗いがもっと増えないでしょうか」

 「外出先でお手洗いに入った認知症の母が、鍵の開け方がわからなくなり、大変でした」

 高齢者にとって使いやすいお手洗いは、だれにとっても使いやすいはず。そんなお手洗いが、どんどん増えたらよいですね。 (宮本典子 臨床心理士)

(イラスト:小牧真子)

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宮本典子(みやもと のりこ)

 慶成会老年学研究所主任研究員。 臨床心理士。

 聖心女子大学文学部歴史社会学科人間関係(現人間関係学科)卒業。

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 主に認知症高齢者、高齢期のうつ病の心理療法及び介護家族の心のケアにかかわる。自宅で暮らす高齢者や認知症の人を対象に、情緒の安定や認知機能の低下予防をめざす心理療法プログラム「ユリの木会」を運営している。共著に「認知症と診断されたあなたへ」(医学書院)、編著に「いちばん未来のアイデアブック」(木楽舎)がある。

慶成会老年学研究所

 高齢社会に関する心理学的、医学的臨床、研究、及び教育・研修を行う研究所として、1988年に設立。現在、心理学の専門家によって、高齢者と家族を対象にしたカウンセリング、専門職や一般企業への教育・研修と、高齢者と高齢社会に関する学際的な研究を行っている。

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