科学
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電線のないペースメーカー登場、感染症リスク少なく
心臓の拍動が遅くなり、めまいや息苦しさを引き起こす「徐脈性不整脈」。心臓に植え込むカプセル型の新しいペースメーカーが登場し、東京都台東区に住む患者の山浦
本体と電極が一体
徐脈性不整脈は、心臓を動かす電気信号がうまく伝わらないことで起こる。血液が脳や全身に十分に送られなくなり、息切れやだるさ、めまい、失神などの症状が表れる。ペースメーカーは、脈が遅くなったときに作動して、心臓に電気刺激を与えることで正常な脈拍に戻す働きがある。
従来のペースメーカーは、手術で本体を鎖骨下の皮膚の下に植え込み、心臓内部に設置する電極までリード(電線)でつないでいた。このため、ペースメーカーを収納した部分や、リードが通っている部分から細菌が入り込み、感染症にかかる危険性があった。リードが断線するトラブルも起こっていた。
山浦さんは今年6月、東京医科歯科大学病院(東京都文京区)で新しい「リードレスペースメーカー」を心臓に植え込む治療を受けた。重さ1・75グラム、長さ2・6センチの極小のカプセル型で、本体と電極が一体化している。
脚の付け根の静脈から差し込んだカテーテルと呼ばれる細い管を使い、心臓の右心室に直接植え込む。設置するための時間は30~40分程度。開胸手術は必要ないため、患者への負担が減る。従来のような感染症の心配も少なくなる。内蔵している電池の寿命は約12年で、心臓の中に置きっぱなしになるが、サイズが小さいため血流には影響しないという。
最近、めまいを繰り返し、不整脈による一過性の心停止を起こしたこともあるという山浦さん。20年以上前から、何度か失神や脱力に襲われたことがあり、2014年以降はたびたび
山浦さんは、「100メートル歩くだけで休みたくなっていたけど、新型のペースメーカーを付けてから息苦しさがかなり減った。花の手入れなど、やりたいことも増えた」と語る。
全国83医療機関で
リードレスペースメーカーはすでに欧米では承認されていたが、国内でも今年2月に国の承認を受け、9月から保険診療となっている。日本不整脈心電学会が実施できる病院や医師の基準を定めており、9月20日現在、全国83医療機関で植え込むことができる。
同大教授の平尾見三さん(循環器内科)は「今回は心室用だが、いずれ心房用の機器も開発されるだろう。治療機器が小型化する時代の幕開けで、今後は治療の幅がますます広がってくる」と話している。
不整脈は大きく三つに分類され、「徐脈」のほかにも、「頻脈」「期外収縮」がある。
徐脈とは逆に、拍動が速くなるのが頻脈で、突然死を起こす心室細動など一部の危険な症状に対しては、手術で植え込み型除細動器を付けて正常な拍動に戻す。期外収縮は、時々、不規則な拍動が出るが、治療の必要がないことが多い。
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