医療大全
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がん治療と妊娠(5)里親や養子縁組も選択肢
「ママー、抱っこして」
静岡県熱海市の公務員・河村裕美さん(50)は、愛らしい笑顔で胸に飛び込んできた長女のB子ちゃん(2)をギュッと抱きしめた。ありふれた親子の風景だが、河村さんはB子ちゃんの実の親ではない。親が育てられない乳幼児を実子として育てる「特別養子縁組」を結んだ 養親 だ。「血のつながりはなくても、親子であることに変わりはありません」と語る。
河村さんは1999年、子宮 頸 がんと診断された。結婚の1週間後。夫と「赤ちゃんがほしいね」と将来の夢を語り合っていた頃だった。すぐに子宮を摘出する手術を受けた。夫に離婚を切り出すと「2人で生きよう」と支えてくれた。
「ゼロ歳の女の子がいる。養親になりませんか」。2015年夏、児童相談所から電話がかかってきた。がん治療が落ち着いた10年近く前、里親になりたいと児相に申請をしていたことを思い出した。
その子の母親は病気で、育てられないため親権を放棄したいという。父親の所在は不明とのことだった。
その翌週、夫とともに児童養護施設を訪ねた。生後4か月の女の子は、すやすやと眠っていた。河村さんは「顔がなぜか夫に似ている気がした。運命だと思った」と振り返る。同年11月から一緒に暮らし始め、その1年後、裁判所から特別養子縁組が認められた。
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