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「QOD 生と死を問う」に「ファイザー医学記事賞」大賞

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「死」語り合い「生」有意義に

 

 超高齢社会を迎え、「質の高い死とは何か」を考える連載「QOD 生と死を問う」が先月、優れた医学・医療記事に贈られる「第36回ファイザー医学記事賞」の大賞を受賞した。昨年4月に始まった連載は、身近な人を亡くした家族の心情や医療・介護関係者の悩みなどを紹介。タブー視されがちな死と向き合うことで「より良い生」を考えるきっかけを提供したことが評価された。

看取りの対応確認する機会

 

「QOD 生と死を問う」に「ファイザー医学記事賞」大賞

医師の訪問診療を受ける84歳の男性。「最期まで自宅で過ごしたい」と願う高齢者を支えるためには、在宅で利用できる介護・医療体制の整備が求められている(横浜市で)

  ■延命措置に迷う

 連載では、肉親の死に直面した多くの家族の経験を紹介した。第2部「救急と 看取みと り」で母親(当時87歳)を亡くした体験を語ってくれた横浜市の女性(65)は、「看取りの時期が近いことをもっと理解していたら、母に違う対応ができたはず」と振り返る。

 女性の母親は自宅で倒れて心肺停止に。医師からは老衰で心臓が弱り、突然死の可能性も説明されていたが、家族間で真剣に話し合ったことはなかった。救急車を呼んだ女性は、救急隊員から「あらゆる延命措置に同意できるか」と問われ、気が動転し、返答に困ったという。

 結局、強心剤を何本も注射し、40分以上も心臓マッサージを続けたが、搬送された病院で死亡が確認された。「つらい思いをさせたのではないか」と悔やむ女性は、「周辺でも高齢者が増えており、もっと『死』について話しあう機会が必要だと痛感した」と話す。

 紙面では救う側の戸惑いも紹介した。総務省の調査によると、2015年に全国で救急搬送された人は過去最多の約548万人。心肺停止だった約12万人に限ると、70歳以上が7割超だ。その多くが救急搬送で命をとりとめても、元の生活に戻れていないのが実情だ。自然な最期を望む高齢者が増える中、「本人や家族の意向が分からないまま過酷な処置をするのはつらい」と明かす救急隊員もいた。

  ■「思い」尊重する支援

 高齢者や家族を支える医師や看護師、介護士らにもスポットをあてた。第1部「家で看取る」で母親(当時90歳)を介護した女性(57)は、「看護師や介護士の支えが助けになった」と感謝する。

 女性の母親は自宅療養中に大量出血し、危篤状態に陥った。駆けつけた訪問看護師は、「病院に運んでも、栄養を体に送る管をつけるなどの延命治療以外、できることはほとんどない」と冷静に状況を説明。一緒にいた訪問介護士は、女性の背中をさすって気持ちを落ち着かせたという。「家で死にたい」と話していた母親の思いを尊重しようと、女性は救急搬送を諦めた。

 東京医療センター心血管・不整脈センターの医師・布施淳さん(48)は、「医療者がこれから起きることを正しく伝え、本人や家族が共通の死のイメージを持てるよう、手助けすることが重要だ」と話す。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計では、日本の年間死者数は130万人を超え、ピークとなる40年には168万人に達する。「多死社会」となった現在、布施さんは「限られた時間を大事に生きるため、死について語れる文化を作ることが重要だ。そのためにはメディアの役割は大きい」と指摘している。

掲載された「QOD 生と死を問う」

 

  ◇第1部「家で看取る」(2016年4月、3回)

  90歳の母親が亡くなるまで半年間、自宅で介護した女性を取材。

  ◇第2部「救急と看取り」(2016年7~8月、4回)

  心肺停止状態で搬送される高齢者への延命治療の是非や救急医療をリポート。

  ◇第3部「意思決定」(2016年10~11月、4回)

  望む「最期」について周囲に語っておく重要性を訴え、その手法を紹介。

  ◇第4部「死を語る」(2017年1月、3回)

  作家・五木寛之さんらにインタビュー。

  ◇第5部「最期の場」(2017年3月、2回)

  在宅での看取りについて、各自治体の取り組みを追った。

  ◇第6部「今どきの終活」(2017年5~6月、3回)

  葬儀や墓など自分の死後に備える中高年の思いを報告。

  ◇第7部「終末期を支える」(2017年8月、2回)

  生活の質を維持しながら最期を迎えるための介護サービスなどを取り上げた。

 ※「QOD 生と死」の連載一覧は こちら

QOD考えるには?

 

 多死社会となり、「より良い逝き方」を考えるQOD(Quality of Death、死の質)という視点が注目されている。QODを高めるには、望んだ「死に場所」や治療法が得られ、苦痛が少なく、遺言・墓などの準備ができ、家族と過ごす時間があることなどが必要とされる。

 しかし、望む最期の過ごし方が、現実とかけ離れているケースが目立つ。背景には、本人と家族、医療関係者とのコミュニケーション不足のほか、医療・介護の連携、高齢期の住まいや療養の場の確保など様々な課題がある。社会全体でQODを高める対応をどう進めていくのか。現場にこだわりながら、読者の皆さんと一緒に考える紙面づくりを続けたい。

 (本田麻由美、大広悠子)

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